第52話 依頼
第52話 依頼
ジャイアント討伐の打ち上げで、討伐メンバー皆で飲んでいた。
「酒は飲んでも飲まれるな。飲むのは、ほどほどにしておけよ」ギルドマスターを務める親父から何度も言われてきた言葉だ。
一流の冒険者は、いつ何時戦いに巻き込まれるかわからない、だから酔い潰れてはいけないのだという教えだ。
他の冒険者達はへべれけに酔っ払っているが、僕は親父の教え通り、ほどほどにしか飲んでいなかった。
オリビアは飲み過ぎたのか、先ほどからテーブルに顔を埋めて眠っている。
イオタの方は、アルコールを一切飲んでいないようで、食べてばかりいる。
少しボーッとしながら、僕がそんな状況を眺めているところに、受付嬢のリンダさんがやって来た。
「メンデス様、イオタ様、オリビア様、少しお話があるのですが、お時間いただけますでしょうか?」
「うん、良いけど…。オリビアはこんな状態だから、イオタと二人だけれど構わないかな?」
「勿論です」
リンダさんの話では、ワイバーンの討伐に出かけたグランデさん達のパーティーが、予定を過ぎても帰ってきていないそうだ。
討伐場所は、ここから馬車で3時間程東に行ったレットン帝国との国境近くの洞穴で、討伐に要する時間を考えても、帰りが遅すぎるというのだ。
予定より時間がかかることは普通にあることだから、僕は心配はいらないと思ったのだが、リンダさんは、グランデさん達のパーティーに限ってそんなことはないと言う。
「イオタ、どう思う?もし戦いが長引いているのなら、助けに入るのは悪いことではないけど…」
「そうね…。因みに、オリビアは解毒の魔法で無理にでも酔いから醒ます事ができるわ。だからオリビアの状態は考えないで、メンデスの思い通りにしたら良いわ」
「Aクラス冒険者のパーティーの危機かもしれないのか…」
「ええ、何の確証もないただの勘なんだけど…、どうしても嫌な予感がするんです。何も無くても報酬ははずみますから、今からでもお願いできないでしょうか?」
そのとき、ベックの迷宮での出来事が、…最悪の出来事が僕の脳裏をよぎった…。
もし本当にグランデさん達が危機に陥っているとしても、また僕の一存で、パーティーを危険にさらしてしまって良いのか?
ミーレ冒険者ギルドで一番のパーティーが危機に瀕している状態で、僕達が行っても状況は変わらないのではないか…?
そんなネガティブな考えばかりが頭をよぎる…。
そのとき、イオタが言った。
「もう!メンデスらしくないわね。ここで行かなきゃ、後悔するわよ」
「……そうだね、イオタ、ありがとう。リンダさん、地図と馬を三頭用意してくれますか?それとイオタ、オリビアの酔いを醒まして。早く出発しよう」
「メンデス様、イオタ様、有り難う御座います。直ぐに馬を用意いたします」
「じゃあ準備が整い次第出発しよう」
「了解。まずはオリビアの解毒をしてくるわ」
「宜しく」
それから、僕達は速やかに準備を整え、東の洞穴へと出発したのだった。
僕達は、馬を飛ばして、2時間半程でワイバーンの巣がある洞穴へとたどり着いた。
途中の道はほぼ一本道であったが、グランデさん達と遭遇することはなかった。
洞穴の入り口から奥までの距離がかなりあるのか、入り口から中の様子はわからなかった。
僕達は馬を近くの木につなぎ止めて、急いで洞穴の中へと入っていった。
「オリビア、魔法で明かりを」
「わかったわ」
「じゃあ、足下に気をつけながら走って行くよ」
「了解」僕達は、奥へ奥へと進んでいった。
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