第51話 懸念
第51話 懸念
「やったぜー」冒険者達の叫び声が聞こえる。
ある冒険者達は、握手をしながらお互いを讃えあっている。
他の冒険者は、仲間の怪我を心配し、仲間の下に向かっていたが、イオタの呪文で完治しているのを見て驚いている。
「メンデスさん、あんた達のおかげで、誰もやられることなく討伐できたぜ。感謝する。あんた達が来てなかったら、どうなっていたことか…。本当にありがとう」
「どう致しましてっていうか、気にしないでよ。それが僕達の来た理由なんだから。さあ、ギルドに戻って報告だね」
「ああ、そうしよう」
僕達はみんなで冒険者ギルドに向かった。
帰り道の途中に、オリビアとイオタが声をかけてきた。
「メンデス、大丈夫?」
「うん、大丈夫」
「本当?あのとき、ブレス攻撃されそうになったとき、どうして飛び出したの?間に合うタイミングじゃなかったでしょう?」
「うん…気付いてた?確かに間に合うタイミングじゃなかったけど、僕はタンクなんだ。みんなを守るために、僕が何とかしなきゃ」
「受けきれる自信はあったの?」
「わからない。でもそうするしかなかった。それが僕の役割だし…」
「そうね…。でも、もしあのときメンデスが倒れていたら、私たちは勝てなかったかもしれないわ。あのジャイアントには魔法攻撃が効かなかったから、剣で戦うしかなかったもの。あの中に、メンデス以外にジャイアントと剣で戦える人は居なかったわ」
「そうだね…、もっと慎重に行くべきだったかもしれない」
「そうね、気をつけて。ところで、あのときジャイアントの顔面で起こった爆発はメンデスの攻撃じゃないわよね?あれは何?」
「ああ、あれ…ね。あのおかげで助かったよ。でも、突然のことだったから、僕もよく分からないんだ」
「そうなの…?とにかく、タンクだからといって、無茶はやめてよね」
「肝に銘じておきます…」
その後も、僕達はおしゃべりをしながら冒険者ギルドに戻ってきた。
受付嬢のリンダに、ジャイアント討伐の詳細な報告をした。
リンダは、強敵であるジャイアント五体を、誰も欠けることがなく討伐したことに、驚いていた。
ギルドから多額の賞金が出ることになった。
他の冒険者達は、一番活躍した僕達のパーティーに賞金を全額譲ると言い出したが、僕の一存で均等に分けることになった。
「それじゃあ、せめて今夜は奢らせてくれ。祝杯をあげよう」
「そりゃあ良い」他の冒険者達は盛り上がっている。
「オリビア、イオタ、それでいい?」
「勿論良いわよ」
僕達は、そのままギルドで祝杯をあげることになったのだった。
*
受付嬢のリンダは、冒険者達のそんな姿を眺めていた。
もうすっかり日が暮れた、もうすぐ上がりの時間だ。
でも、気になることが一つある。
Aクラス冒険者のグランデ様が、パーティーと伴にワイバーンの討伐に出かけたのが今朝のこと。
予定では今日中に帰還するはずだが、まだ戻ってきていない。
確かに、予定通りに事が進まなくて、帰還が遅れることはよくあることだ。
しかしグランデ様達のパーティー「time is money」は優秀なパーティーで、予定より遅れることは今までに一度も無かった。
なんだか嫌な予感がする…。
もしこのまま戻ってこないとしたら、ギルドの規定では、明後日から捜索に出ることになる。
それでは遅すぎるのでは…?
しかし、今のギルドにtime is moneyのような優秀なパーティーは所属して居ない。
ワイバーンが想定以上の強敵であった場合、誰もグランデ様達を助けに行くことなどできない…。
そのとき、リベリス王国の冒険者ギルドからやって来たというメンデス様達が目に入った。
ギルド規定に反することになるかもしれないけど、メンデス様達に依頼してみようかしら…。
そのとき、交代のニーナがやって来た。
私は簡単に申し送りを済ませた後、メンデス様達の所にやって来た。
「メンデス様、イオタ様、オリビア様、少しお話があるのですが、お時間いただけますでしょうか?」
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