第49章 作戦
第49章 作戦
僕達は速やかに西門に到着した。
西門付近は、ミーレの街が魔物達に破壊された際に、大きな被害を受けた場所の一つである。
西門を含めたこの辺りの城郭は、破壊された傷跡が未だに残っており、堅牢な城壁ではなく、バリケードのような物で補修されているのみである。
この状況では、魔物は簡単に街に入ることが出来るだろう。
ここに到着する前に魔物の討伐を済まさねばならないようだ。
周囲を確認すると、魔物との戦闘ができそうな者は、三人の騎士と十人程の冒険者だけといったところであった。
その者達も、落ち着きがなく、浮かない表情をしている。
僕は魔物の状況を確認するために、一番レベルの高そうな冒険者に話しかけた。
「ちょっと済まない。僕はリベリス王国の冒険者ギルドに属するメンデスという者なんだけど、ボランティアでミーレの冒険者ギルドに協力しているんだ。サイレンを聞いて魔物の討伐にやって来たんだけど、状況を教えて貰えないかな?」
「あーん?あんた達も魔物の討伐に協力してくれるのか?そりゃ、助かるが、状況は良くないぜ」
「うん。で、どんな状況かな?」
「今、ここから2kmほど先に、5体のジャイアントがいる。それがこちらに歩きながら向かってきていて、あと十分程で到着しそうだ」
「ジャイアントか…、わかった。で、誰が指揮を執るのかな?」
「あー、それも問題なんだ。いつも指揮を執っているAクラス冒険者のグランデさんが、パーティーと伴にワイバーンの討伐に向かっていて、今日はいないんだ。おまけに騎士隊もグランデさん達に同行していていない。今この街にいるのは、ここに居る俺達とそこの騎士見習い達だけなんだ。正直に言って、指揮を執るものもいないし、ジャイアントみたいな大物は、今の俺達の手に負えるとは思えねえ。それでも放り出す訳にはいかないから、こうして集まっているんだが…。正直いって、厳しいぜ…」
「ここに来るまでに、騎士の姿を見かけたけど、あの人達は来ないのかな?」
「ああ、今巡回している騎士の多くは貴族のご子息とかで、魔物の討伐には来ちゃくれねえぜ」
「そうか…。僕達はAクラス冒険者なんだ。今回の討伐は、僕達に任せてくれないかな?」
「Aクラス!!それは助かったぜ。…でも、あんた達だけに任せるわけにはいかねえ。俺達もあんたの指揮に入るから、命令してくれ」
「わかった。じゃあ、オリビア」
「わかっているわ。そうね、まずここから200m程先で、ジャイアントを眠らせるわ」
「OK。それで、眠らなかったジャイアントは、2体までなら僕が仕留める。その間に、あなた達は眠りに落ちているジャイアントを始末してくれないか?眠っているから急所を一発で仕留めれば、反撃されることもないし」
「わかったぜ。それで、3体以上眠らなかったらどうすりゃ良い?」
「その時は、私が直ぐにスリプルをかけ直すわ。絶対にここまでは来させないから安心して」
「わかったぜ」
「くれぐれも一発で仕留めてくれよ。中途半端な攻撃だと眠りから覚めるかもしれない」
「ああ、わかったぜ」
「おう、てめえら、今の話を聞いたか?俺達は眠ったジャイアントを仕留めるだけで良い。但し、一発で仕留めろよ。眠ったジャイアント一体に三人がかりだ。油断しなければ大丈夫だ。勇気を持っていこうぜ!」
「おう!」
冒険者達は少し元気が出てきたようだ。
「後、私からもひとこと言わせてね。少々怪我をしても大丈夫よ。私が治してあげるから。だから、勇気を持って、怪我を恐れず戦ってね」
「おう、ヒーラーまで居るのか?ありがてえ。よし、これなら行けそうだぜ!」
「でも無理は、し過ぎないでね。最悪、僕達が何とかするから」
「ありがてえ、恩に着るぜ」
読んで頂き有り難う御座います。宜しければ、高評価、ブックマーク登録をお願いいたします。