第44話 ミーレ
第44話 ミーレ
ここは、諸国連合内のネス公国の都市ミーレ。
ネス公国は、メリーナ湖の北東側に存在し、ドワーフ王国と国境を接する諸国連合第二の国である。
統治するのは人族のノルマンディー公爵であるが、ドワーフ王国との交流が盛んであり、ドワーフ族もこの国で多く見られる。
ミーレは、そのネス公国の中でも比較的大きな都市で、場所柄、特にドワーフの数が多いとされている。
今はそのドワーフたちが大活躍していた。
都市ミーレは、ピレーネ山が噴火した際、溶岩流や火砕流、噴石や火山灰といったものの直接的な影響を受けることはなかった。
しかし、そういった自然災害や突然現れたドラゴンから逃げようとする無数の魔物達の通り道になり、都市の一割近くが被害を受けた。
ドワーフ族の人たちは、資材の運び入れや廃材の運び出しの手伝いをし、また建築現場ではその技量を存分に発揮している。
元来ドワーフ族は、身体が丈夫で力の強い種族であり、また建築技術も高く、このような災害時にはとても頼りになるのだ。
女神様による転移で、メンデス達がミーレ郊外にやって来た後、ミーレ近郊で資材を運んでいたドワーフ達が、魔物に襲われ、応戦しているのに出くわした。
ドワーフ族は押し並べて優れた戦士でもあるのだが、今は魔物達に苦戦しているようだった。
「助けに入るよ」
「了解」
メンデス、オリビア、イオタの三人は、ドワーフの人たちに声をかけながら、魔物との戦闘に割って入った。
メンデスが先頭を切り、グレート・タイガーの前に出た。
グレート・タイガーは3mにも迫る巨大なトラの魔物で、それが三体も牙をむいていた。
メンデスは大きな盾で防御しつつ、巧みに剣を操り、グレート・タイガーに応戦していった。
オリビアはスリプルの呪文を唱え、三体のうちの二体のグレート・タイガーを睡眠に落とす事に成功した。
イオタは怪我人の治療を優先して行っている。
メンデスは、グレート・タイガーの二体が眠りに落ちたのを確認すると、一気に攻勢に出た。
流星剣を使って、対峙していた一体を葬り去ると、眠りに落ちている二体のグレート・タイガーを次々に斬り伏せた。
「皆さん大丈夫ですか?」
「ああ、助かったわい、ありがとう」
「危ないところでしたね。ところで、どうしてこんな町の近くに魔物が出現するのですか?」
「ああ、それだがな…」
助けたドワーフの話によると、自然災害が落ち着いてきた後、一斉に逃げた魔物達が徐々に自分の巣に戻って行ったのだが、自分たちの巣が災害により破壊された魔物も多く、そのような魔物が頻繁に都市やその近辺にやって来て、人々を襲っているのだという。
メンデス達は、なぜ女神様達が自分たちをこの地に運んだのか、その理由を悟った気がした。
「僕達は、リベリス王国の冒険者ギルドのものです。とりあえず、ミーレに入るまでの護衛をしましょう」
「ありがとう、助かるわい」
そのままメンデス達は、ミーレまでドワーフの人たちの護衛を務めた。
そしてミーレに入った後、ドワーフの人たちと別れ、ミーレ内の比較的高級そうな宿泊施設に二部屋確保した。
メンデス用の一人部屋と、オリビアとイオタ用の二人部屋である。
二人部屋に荷物を運び終えると、メンデスは二人に話しかけた。
「冒険者ギルドに行って、手続きと状況の確認をしてくるよ。その間、オリビアとイオタはゆっくりと休んでおいてね」
「ありがとう。お願いするわ。メンデスさんは紳士なんですね」
「ありがとう、遠慮なくそうさせていただきますわ」
オリビアもイオタも少々疲れているようだ。
「二人の事もギルマスと連絡を取って、上手く処理しておくよ。じゃあ、行ってきます」
「お願いします。行ってらっしゃい」
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