第42話 婚約
第42話 婚約
「やったわ」
「うん、やったね。でも、やっぱり時間を停止してきたね」
「そうね。時間停止に関しては、もう少し対策を考えた方が良いかもしれないわね。それにしても、レンの瞬間移動は、暗殺スキルと併用すると、とんでもないわね」
「そうよね。スキルと合わせれば、クリティカルは避けられそうにないわ。私ならお手上げね」
「いや、ルナにはルナの優位な部分があるし、エライザの加護も状況によっては僕のスキルより優れているよ」
「そうよね…。後は、それぞれの強みをお互いに引き出すように連携できれば良いわね」
「そうよね」
「ところで、ここで一旦キャンプをはろう」
「良いわよ。戦闘時の細かな打ち合わせをする?」
「それもあるけど、ルナが魔力を吸収する時間をとろう」
「あら、気が利くわね。ありがとう」
「ねえ、エライザ…。今、あの話をしても良いかしら?」
「…三人きりだし、丁度良いわね。でも、こんな場所で良いの?まあ、その前に魔力の補填をして頂戴」
「ええ」
「あの話って、何?…でもまず魔力を吸収してよ」
「そうするわ」
ルナは静かに魔力の吸収を始めた。
エライザは、それを興味深そうに眺めている。
僕はそんな二人をボーッと眺めながら、考えに耽っていた。
三人の長所を引き出す戦略…。
僕の最大の強みは、瞬間移動を組み合わせた死点への攻撃だ。
これが決まれば、ほぼ抹殺できる。
ルナの強みは、超重力魔法と強大魔法を無詠唱で連発できることだ。
魔法が有効な相手なら魔法で押し切ることができるし、そうでなくても有利な状況にもって行ける。
エライザの強みは…。
考えがここに至ったとき、ルナは魔力の補充を終えたようで、僕に話しかけてきた。
「レン!何をボーッとしているの?魔力の補填は終了したわ」
「そう?もう終わったの?…それで、話って何?」
ルナは、少し頬を赤らめながら僕の目を見つめた。
「レンとエライザは婚約しているのよね?」
「そうだけど…?」
「私はね、女神ベス様の眷属で、女神様は自由を司っているの」
「うん、知っているよ」
「だから、私も前世と違って、自由な考え方に染まっているのよ。だから…」
「ちょっと待って。その前に、エライザはこの件のことを知っているの?」
「知っているわ。少し前にルナに相談されて、私も合意しているわ」
「えっそうなの?それなら続きを聞こう」
「うん、それでね、もし、レンさえ良ければ、…私とも結婚して欲しいの。つまり私もレンの婚約者にして欲しい…」
「…僕はね、エライザのことをとても大切に思っている。でもそれと同時に、ルナのことも、同郷と言うことを抜きにしても大事に思っているよ」
「それじゃあ良いのね?」
「でも…」
僕はどうすれば良いのだろう…?
その時、「自分の気持ちに素直に従えば良いのよ」女神サリア様の声が聞こえた気がした。
そうか…、そうだよね…。
「…もし婚約者のエライザが良いというのであれば…」
「レン、この世界ではね、結婚の形は多彩なの。一夫多妻のところもあれば、多夫多妻のところもある。私はレンもルナも好き。だから私は構わないわ。但し、ルナ、私が第一夫人よ。それは忘れないでね」
「勿論、わかっているわ」
「それじゃあ、これからは、私たち三人家族ね」
「そうね」
僕は、戸惑いながらも頷くしかなかった…。
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