第18話 休息日
第18話 休息日
今日はパーティーの休息日である。
レイリア達は、気分転換に、買い物に出かけるらしい。
僕達も一緒にどうかと誘われたが、メンデスは何かしら用事があるらしく、朝からギルドへと向かうという。
僕は少し迷ったが、コボルト・キングのときの件もあり、今回は迷宮に潜ることにした。
今日は、特に時空間操作スキルと暗殺スキルとステルス・スキル、この三つのスキルを鍛えるべく、グレートサーペントを周回しようと心に決めた。
この三つのスキルが仲間を守る鍵になると思えたからだ。
ソロ攻略も慣れたもので、三つのスキルを使用しつつ、グレートサーペントを難なく倒すことができた。
周回を重ね、かなりの経験値を得ることができた。
周回を終えた後、ステータスを確認すべく、能力鑑定を行った。
レン 人間族 13歳 男
職業 忍者 職業レベル5↑
基礎ステータス
力 19↑、知性 16、信仰心 16↑、生命力 18↑、体力 17、敏捷性 19、幸運 18↑、器用さ 19↑
職業スキル
ステルス レベル5↑、遠見の術 レベル2、暗視 レベル5↑、
気配察知 レベル5↑、状態異常抵抗 レベル3↑、
暗殺 レベル5↑、投擲 レベル5↑
固有スキル
時空間操作 レベル5↑、魔力操作 レベル5↑
生活魔法
火属性 レベル4↑、水属性 レベル3、風属性 レベル4↑、土属性 レベル3、精神属性 レベル4↑
その他 攻撃魔法適正なし
職業レベルがあがり、基礎ステータスや種々のスキルレベルが上がっている。
暗殺スキル、投擲スキルがレベル5になったことにより、魔弾を打てるようになった。
これは、魔力を練って指先にチャージし、銃の弾丸のように不可視の弾を飛ばすスキルで、固体に当たるまでは、スピードや威力が落ちない性質がある。
すなわちどれだけ距離が離れていても、間に固体さえなければ、着弾するまで威力が落ちない訳である。
今のところチャージの時間が必要なので、戦闘中に何度も使用するのは難しいが、戦闘開始時の使用や迷宮外で遠距離射撃を行うような場面で有効となる。
さらに、魔力操作がレベル5になり、魔力の操作がより精密に行えるようになった。
例えば、魔力で手を高温にする場合、以前なら手のひら全体が熱くなっていたが、今なら親指と人差し指の先端部だけ熱くするとか、熱くする温度を調節するとか、細かい芸当ができるようになったのだ。
まあ戦闘には何の役にも立たないけど。
最後に、時空間操作スキルがレベル5になり、時間の流れに干渉する能力が高くなったようだ。
様々なスキルを強化することができたが、仲間を守るために効果的な、新たなスキルを得ることは、できなかった。
「そんなに甘くはないか…」僕は少し気落ちしつつも、ギルドに立ち寄り、報告を済ませ、宿泊施設に戻るのであった。
宿泊施設に戻ると、レイリア達と合流した。
メンデスはまだ帰ってないらしい。
「これ、私たち三人からレンにプレゼントよ。遠慮なく受け取ってね」
「えっ、本当?ありがとう。…これは護符?」
「そう、スピードの護符。より速く動ける。防吸の護符はメンデスに譲った。今度はレンの番」
「ありがとう。これは僕にぴったりだ」
「そうなのです。私達もぴったりだと思って選んだのです」
「ありがとう。明日からこれを身につけて、さらに頑張るね」
「うん!」
「ところでレベルは上がったの?」
「うん、上がったよ。レベル5だ」
「すごいわね、私たちも負けていられないわ」レイリアが言うと、みんなうんうんとうなずいている。
「メンデスはまだ帰ってないんだね?何の用事か聞いてる?」
「いいえなのです、ギルド関係の用事としか聞いてないのです」
「そうか…、それじゃあまた後で。メンデスが帰ってきたら声をかけるよ。明日からは第二層後半部に行くだろうから、ミーティングが必要だしね」
「了解」
夕食時になって、ようやくメンデスが帰ってきた。
皆で夕食を楽しんだ後、ミーティングを始めた。
「みんな、ブリーフィングを始めるよ」
「っと、その前に今日の報告をするね。今日はギルドの要請で、この前のヴァンパイアの件の詳細をあらためて報告して来たんだ。その後に、ギルド職員の調査結果と他の冒険者からの報告のまとめを聞いてきたんだよ」
「結論から言うと、あの後にコウモリの像で出現したヴァンパイアは、すべて通常のものだったらしいよ」
「また迷宮の後半部で出現するヴァンパイアも通常通りだったようで、僕たちが遭遇したヴァンパイアは特殊個体で、もう迷宮にはいないだろうとの結論となったそうだよ」
「うーん、不思議な話だね。納得が行かないというか…よく分からない気もするけど、仕方がないのかな…」
「そう、あのヴァンパイアは、僕たちを狙って出現した可能性もあるし、今後も気を抜かないようにしよう」
「その通りですね」
「報告はこんなところかな。で、ブリーフィングをはじめるね……」
*
ブリーフィングが終わった後、つまらないことで言い争いが起こってしまった。
何でも目玉焼き(この世界では焼き卵というらしいが)の焼き方で意見が対立したのだ。
メンデスとレイリアはいわゆるターンオーバー(両面を焼く)派でリンとサーシャはサニーサイドアップ(片面を焼く、蒸し焼きにすることもある)派だという。
「これで二対二なのです。レンはどちら派です?」
「えっ、僕はどちら派で…」
「レン!どちら派なのですか?」
(うっ、正直どちらでも良い…、あえて言うならサニーサイドアップ派か…。でもそれは言ったらまずいよね…。そうだ!ある意味賭けになるが、それ以外の調理法でごまかすか…)
「どうしてその二つなんだよ。卵料理は他にもいろいろあるだろう。僕はだし巻き卵が好物だよ」
「何だよそれ?」四人の声が重なる。
「あっ、この世界にはないのか?なら卵焼きは?ゆで卵は?」
「そんなの無いよ!」
「卵料理と言ったら焼き卵だわ!」
「一番好物のだし巻きは材料がないし作れないから、…そうだな、ゆで卵を作ってみるよ?生卵を用意して。」
「本当は熱湯で15分ほど茹でるんだけどね」
「待ってほしいですわ。熱湯に卵を割って入れるのですか?」
「そういう料理法もあるけど、ゆで卵は殻ごと入れるんだよ。時間がかかるからスキルでサクッと作ってみるね」
両手で包み込むように卵を持つと、魔力で両手を熱して約100℃に保った。
これで十五分ほど待つとゆで卵が出来るはず。
でもみんなを待たすのも悪いので、時空間操作スキルを使うことにした。
スキルをフルに使えば、みんなは数分間待つだけで済むだろう。
時空間操作スキルを使うと、今や体感速度は数分の一ほどに出来るのだ。
「じゃあ、時空間操作スキルを使うよ」
…完成したゆで卵であったが、みんなには、それほど受けが良くなかった。
…今度はだし巻きでリベンジだ。
読んで頂き有り難う御座います。宜しければブックマーク登録をお願いいたします。