第35話 話し合い
第35話 話し合い
僕達は、最初に上陸した海岸まで戻ってきた。
子供達が海岸で遊んでいる。
子供達は、僕達の姿に気付いたが、逃げる事はなかった。
僕達は、綺麗な白砂の砂浜に寝転んで、穏やかになった空を眺めた。
聞こえてくるのは、波の音と子供達のはしゃいだ声だけ。
…静かに時が流れている。
僕は失った仲間達の事を考えていた。
この世界に召喚されてから、多くの出会いと別れがあった。
自分の進んできた道は、間違ってはいなかったのだろうか?
答えはわからない…。
最近は不穏な事ばかりが起こっている。
この先、仲間を失わずに済むには、どうすれば良いのだろう…。
そう考え込んでいると、「ねえ、レン、何を考え込んでいるの?」とエライザが話しかけてきた。
「うん…、今までの事、それからこれからの事、かな?」
「そう…。少し話をしても良いかな?」
「何?」
「時間を停止しているときの事だけど、停止した時間の中でレンとルナはどうしているの?」
「どうしているって、それは戦闘をしているんだけど…」
「そうなんでしょうけどね…。上手く言えないんだけど、何だか疎外感を感じてしまって。だって、停止した世界では、敵を除くと、レンとルナだけが存在しているようなものなのかなって?」
「うーん、いつも結構ギリギリの戦いをしている事が多いから、あんまり考える余裕もないけど、そうなるのかな…。それで?」
「うん…」
「レン、エライザ、二人で話しているところ悪いんだけど、私も中に入っても良い?」
「うん…」
「エライザはね、きっとレンの事が心配なのよ。同郷である私とレンが二人だけの世界にいるようなものでしょ?婚約者のレンが心配なんだと思う」
「それはっ、…正直に言うとそうなの。レンやルナの事は信じているわ。頭では信じているんだけど、気持ちのほうはね…」
「…ごめん、エライザ。心配をかけて。でも、僕達はそんな事はないから…」
エライザ「…」
ルナ「…」
沖合に停泊していたアーバイン号が、汽笛を鳴らしながら、ゆっくりとこちらに向かってきている。
渡り鳥の鳴き声が聞こえた。
「…ねえ、エライザ、後ほど二人でゆっくりと話がしたいんだけど、良いかしら?」
「…良いわよ、ルナ。私もゆっくりルナと話がしたかったの。じゃあ後で、二人で話をしましょう」
「お願いね」
*
アーバイン号に乗り込んだ僕達は、ジャック船長に、リベリスポートまで運んでもらうようにお願いしたが、魔族の船はリベリスポートに入港できないらしく、ドワーフ王国のターレ港まで運んでもらう事になった。
アーバイン号は、往路とは反対に、ユリアス大陸を反時計回りに進んでいった。
ユリアス大陸の北側では、風はいつも西風が多く、復路はかなり時間を要した。
ターレ港に到着するまであと一日と迫った頃、船内のある一室で、ルナとエライザが二人で話し合っていた。
「それで、話って何?」
「うん、レンの事だけれども…」
「やっぱりレンの事よね、それで?」
「うん、レンの事で、折り入って相談があるんだけれど…」
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