第33話 戦闘
第33話 戦闘
戦闘が開始すると共に、僕は時空間スキルを使い、時間の流れに干渉した。
しかし、時間の流れが緩慢になると同時に、精霊女王による強力な重力場に囚われてしまった。
重力場は本当に強力で、僕は動くことさえできない。
その直後に、ルナは時の流れを停止させたが、停止した時間の中でも超重力の影響は消えなかった。
そしてルナは更にスペリオル・グラヴィティを発動させ、精霊女王の呪文を相殺してくれた。
その間に、精霊女王は、新たに精霊語の呪文を唱え始めている。
更に続けて、ルナはニュークリア・バーストの魔法を発動させた。
ニュークリア・バーストの炎が、精霊女王を包み込むように燃焼している。
今だ!
僕は時間停止を上書きした。
それと同時に、右手に魔力をチャージし始め、手裏剣を右手に持った。
ニュークリア・バーストの炎は精霊女王を焼き続けているが、精霊女王の呪文は止まらない。
「レン!呪文攻撃も効果が乏しいみたいだわ」
「わかっている。僕に任せて」
炎の勢いが衰えてきた。
チャージを続けたまま、僕は精霊女王に向かって走り出した。
炎が消失するタイミングにぴったりと会わせ、僕は精霊女王に攻撃を加えた。
物理攻撃が無効な精霊女王は、その攻撃を避けようともしていない。
僕は、精霊女王の胸部に手裏剣を突き刺し、手裏剣より魔力を放った。
この攻撃により精霊女王はダメージを受け、驚くと共に、憤怒の形相が苦痛にあえいだ。
効いている。
でも、効果は不十分だ。
精霊女王は直ぐに詠唱を再開した。
「レン、今の攻撃は効いているわ」
「わかっている。でも不十分だ」僕は魔力のチャージを再開しているが、まだしばらく時間がかかる。
精霊女王の呪文には間に合わないかもしれない。
そう思った瞬間に、精霊女王は呪文を完成させた。
突然、空中にいくつもの氷の槍が出現し、それが一斉に僕に襲いかかってきた。
僕は高速に移動しつつ、手裏剣や手刀で槍を無効化していったが、いくつもの小さな傷を負い、左腕には槍が刺さってしまった。
「くっ!」
「レン!大丈夫」
僕は左腕に刺さった槍を引き抜いた。
痛い。
でも氷の影響なのか、出血は多くない、まだ戦える。
「大丈夫」僕はそう叫ぶと動き出した。
僕は走りながら、ステルス・スキルを使い、女王の死角に入った。
高速移動をし、精霊女王に気付かれぬまま背後にまわり、後頭部へ致命の一撃となるはずの魔力を帯びた手刀攻撃を加えた。
手刀攻撃が当たった瞬間に、手刀はまばゆい光を放った。
しかし、精霊女王の頭部は破裂しなかった。
だがその攻撃を受け、精霊女王は、大きく揺らめいている。
その姿は透明度を増し、存在が消えそうになりながら、揺らめいている。
「やったか?」
「いや、まだだわ」
しばらくして精霊女王の揺らめきが止まったかと思うと、再び存在感が増大し、魔力が高まっていくのが感じられる。
「あの攻撃でも駄目なのか」
単純な物理攻撃は効果が全くなく、最高峰の攻撃魔法でさえ問題とせず、魔法と物理攻撃の融合技を死点に撃ち込んでさえ、効果が不十分である。
一体どうすれば…?
その間にも、精霊女王は回復を続け、再び呪文の詠唱を開始した。
僕達は少し焦ってきた。
もうすぐ、時間停止が終了してしまいそうだからだ。
僕よりもルナの時間停止が先に終了するだろう。
精霊女王の時間停止がいつまで続くのかはわからないが、このままでは危ない。
どうする…?
その時ルナが叫んだ。
「時間がないわ。私の呪文をその手に宿して!」
ルナは僕のそばに来ると、右腕をつかんだ。
そして僕の右腕に宿すように、ニュークリア・バーストの呪文を僕に譲渡した。
ルナは魔力を譲渡する技術を応用したのだ。
僕の右腕に強大な魔力が宿るのを感じた。
これならば…。
僕は決心し、最後の攻撃に出た。
ステルス・スキルを使い、詠唱中の精霊女王の死角に再び入った。
死角を確保しながら、高速移動し精霊女王に近づくと、音もなくジャンプした。
今度は精霊女王の頭上からの攻撃だ。
精霊女王の頭上から落下しながら、落下速度に突きの速度を加え、頭頂部に手刀攻撃を加えた。
それと同時に、右腕に宿ったニュークリア・バーストを手刀より解放した。
手刀が光り輝いた。
それと共に大爆発が生じ、僕は吹き飛ばされてしまった。
…時間が動き出した。
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