第32話 精霊女王
第32話 精霊女王
「この結界を解く前に言っておく。連れて行くのはできるだけ少人数の方が良い。人数が多ければ多いほど、途中で力を使い果たす危険が高くなるから。それで、何人連れて行けば良い?」
「それは…。レンと私の二人ね。時間を停止した世界で戦えるのは私たちだけだもの」
「ルナ、ちょっと待って。時間停止するまでは私も戦えるわ。それに、回復が必要になるかもしれないし」
「エライザ、ありがとう。でも私が思うに、直ぐに時間を停止する状況になる」
「そう…?」エライザは悔しそうな顔をしている。
「エライザ、ありがとう。ここは僕達に任せて。戻ってきたら回復をお願い」
「…わかったわ」
「と言う事で、二人を連れて行って」
「わかった。では始める」
精霊は目を閉じると、精霊語の呪文を唱えた。
すると、精霊の森を取り囲んでいた結界は消え去った。
私たちも神木も暴風雨にさらされた。
「…急がなければ」
精霊が更に呪文を唱えると、精霊とレンと私は結界に包まれ、そのまま空中に浮遊した。
「行きましょう」
精霊のその言葉と共に、私たちは結界と共に急上昇を始めた。
丁度、超高速なエレベーターにでも乗っているような感じだ。
私たちは上昇していき、分厚い雨雲を突き抜け、青空が広がる高さまでやって来た。
「結界の外に出ては駄目。空気が薄いし、落下してしまうから。あそこに精霊女王様がいらっしゃる。行く」
上空に漂うように浮かんでいた精霊女王のもとまでやって来た。
「結界を広げ、エタニス様を結界内にお招きする。その後、直ぐに結界を残して、去る。しばらく結界は保つでしょうが、早めに決着をつけて」
精霊がそう言うと、一瞬にして結界が広がり、エタニス様と相対する事が出来た。
「何者じゃ?」精霊女王様は、憤怒の表情で私たちを見ている。
「私はルナ。女神様の遣わした者。エタニス様、私を覚えておられませんか?」
「知らぬな」
「セントレア湖畔の洞窟で、エタニス様に呪文を授かった者です」
「…」沈黙していたエタニス様が、突然苦しみだした。
「エタニス様!」ルナが叫んだ。
しばらくの間、精霊女王は悶え苦しんでいたが、一旦平静を取り戻した。
表情は柔らかな者となっている。
「ルナ、久しぶりじゃ。妾は今何者かに囚われておる。わずかな間しか意識を取り戻しておれぬ故、よく聞くが良い。遠慮は要らぬ、妾を滅ぼせ。今の状況は妾の望むものではない。頼んだぞ」
エタニス様はそう言うと、取り巻く雰囲気は一変し、再び憤怒の表情に戻ってしまった。
「ええい、煩わしい者ども、滅ぼしてくれる」
「ルナ!覚悟を決めていくよ」
「わかってるわ。レン、物理攻撃は効果が無いわ。剣に魔力を纏わせて攻撃して」
「わかった」
私もレンも、時間に干渉し、時間の流れがゆっくりとなった。
精霊女王はスペリオル・グラヴィティの呪文を唱えた。
その途端に、強力な重力場にとらわれた。
私は直ぐに時間を停止させた。
スペリオル・グラヴィティの中では、レンは自由に動く事が出来ない。
私は精霊女王のスペリオル・グラヴィティを相殺するように、スペリオル・グラヴィティを発動させた。
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