第31話 交渉
第31話 交渉
「私たちの神木に触れようとする、不届き者は誰ですか?」
突然現れたのは、半透明で小柄な身体をした、それでいて凜とした印象を持つ少女であった。
「私たちは、精霊女王のエタニス様に会いに来たの」
「エタニス様?それはかなわぬ事」
「なぜ?この世界の異常の原因は、あなた達精霊のせいでしょ?精霊女王のエタニス様に会って話がしたいの」
「だから、それはかなわぬと言ったではないですか」
「どうして?」
少女は思案している。
「…エタニス様の加護を受けているお主には、話して良いのかもしれない…」
しばらく思案していたが、意を決したように、ルナに向かって話し始めた。
「今、エタニス様は何者かに乗っ取られている。そして、乗っ取られたエタニス様の命令によって、多くの精霊達が強制的に自然界に悪影響を与えている。それが今の状況。私はエタニス様が乗っ取られたとき、神木に触れていたから、強制されずに済んだ。自然界の調和が乱れ、この神木までも悪影響を及ぼしかねない状況だったかったから、精霊の森に結界を張ってそれを防いでいる。そのような状況故に、エタニス様はここにはおられない」
そう言うと空に指を指し、「丁度この上空におられる」
「空に…。どうすれば精霊女王様に会えますか?」
「簡単な事。空を飛んで会いに行けば会える」
「それが出来れば、苦労はしないわ。出来ないから聞いているんでしょう?」
「ルナ、ちょっと落ち着いて。ねえ、精霊さん、あなたは私たちを精霊女王様のもとまで連れて行く事は出来ませんか?」
「…出来る」
「それなら、女王様のもとまで私たちを連れて行ってくれませんか?今のこの状況は精霊さん達にとっても好ましくないでしょう?」
「それはそうだが、どのようにして女王様を取り戻すつもり?」
「それは…」
「確かに今の状況は悪い。なんとか状況を改善したい。しかし、あなた達を女王様のもとまで運ぶためには、この森の結界を解かねばならない。故に、連れて行く事は出来ない」
「私たちはこの世界を創った女神様達が遣わしたもの。女神様達は、今も私たちを見守ってくださっているわ。精霊女王様も女神様の創造された者なら、私たちが精霊女王のエタニス様を一旦滅ぼしたとしても、きっと女王様は復活なさるわ」
「女神様によってか?」
「…そう」
「…あなた達はエタニス様に勝てると?」
「きっと勝てるわ」
「地上ならともかく、空中戦でも勝てると?あなた達は空を自由に飛ぶ事も出来ないんでしょう?」
「それは…」
「それでは、やはり連れてはいけない」
「ちょっと待って。精霊女王様は時間を停止させることができる?」
「無論」
「それならば聞きますが、私達が空中に連れて行ってもらったとして、そこで時間を停止しても、私たちは落下してしまいますか?」
「…停止した時間にとらわれていない者は落下する」
「そうか…」
「停止した時間の中で動ける者は、停止した時間の中でも重力の影響を受けるのね?…それなら何とかできるかもしれない。私に任せて」
「…」
「私は、女神様達の遣わした者であり、エタニス様の加護を受けているのよ、信じて」
「わかった」
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