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第28話 海竜

第28話 海竜

私たちの船旅は順調だった。

大陸内部では、異常な気象現象が多発しているようだが、アーバイン号は西からの強い風を受け、予定よりもずいぶん早く、ユリアス大陸の東まで進む事が出来た。

「ここからは南へと舵を取りますが、この辺りは海竜の生息地として、知られているようです。もし海竜が現れるようなら、対処をお願いします」とジャック。

「分かったわ、ジャック船長。ところで、後どの程度でジスパ島に着くのかしら?」

「そうですね…、あと3日というところでしょうか」

「そうですか。海竜が出現したら私たちが対処するので、後3日間、よろしくお願いします」

「承知しました」

海竜という魔物は、竜と名がついてはいるが、正確にはウミヘビの仲間のようで、空を飛ぶ事やブレス攻撃をする事は出来ない。

船の上での戦闘は、今のルナ達には特に問題とならないだろう。

しかし、戦場が海中となれば話は別で、これほど恐ろしい魔物はほとんどいない。

海中での動きが異常に素早く、強力な毒を持ち、締め付ける力も強大で、もし海中で締め付け攻撃をうければ、毒死や窒息死をするまで数分とかからないだろう。

メンデスがそのような説明をして、注意を促している。

「ジスパ島への交易船がない理由が、海竜だと言われている。とにかく船上で戦うようにしよう。海中に逃げ込まれても、深追いは禁物だよ」

「分かったわ。海竜は良いとしても、ジスパ島ってどんな島なの?」

「あまり知られていないから、よく分からないけど、独特な文化を持った人たちが住んでいるらしい。ユリアス大陸の国の中ではムーア国と交流があるようだけど、リベリス王国はムーア国と国交が無いから、あまり情報が入らないんだ」

「そうなんだね。ゲリュートによると、そこに今回の天変地異をおさめる鍵があると…。話が見えてこないな…」

「まあ、行ってみるしかないよ」

「まあ、そうだね」

それからも、しばらくは順調な船旅が続いていたが、本格的に海竜が生息する領域に入ったのか、船から少し離れたところに、海竜の姿を見る事が多くなってきた。

「今のところは、襲ってくる気配はないね」

「そうね、でも油断は禁物よ」

「ほら、あれを見て!」ルナが突然に指を指した向こうには、巨大な竜巻が発生していた。

巨大な竜巻は、すさまじい量の砂やいろいろな者を巻き上げながら、ムーア国の砂漠の辺りをゆっくりと移動している。

「あれも精霊のせいなのかしら、大きな被害が出るかもしれないわ。早くジスパ島にたどり着いて、何とかしなきゃ」

そうルナが呟いたとき、轟音と共に船が大きく揺れた。

「海竜だ!海竜が船にぶつかってきた!」

私たちは、船から落とされないように、しゃがみ込み、周りの何かをつかみながら揺れが収まるのを待った。

しかし、何度も何度も海竜が船に体当たりしてくる。

その度に船の揺れは大きくなり、とうとう船員の一人が海に投げ出されてしまった。

すると、海竜は体当たりをやめ、落ちた船員に嚙みついた。

「いけない。助けなきゃ」

「ルナ、無理だよ。もう助ける事は出来ない。海中であれとやり合うなんて、命知らずも良いところだ」

「でも、命がかかっているのよ」

「分かっている。でも良く見てみて、もう息絶えている」

海竜の毒は、既に船員の命を絶っていた。

その後、海竜は船員を一呑みにすると、満足そうに去って行ってしまった。

「ジャック船長、申し訳ありません。私たちがこんなことを頼んだばかりに…」

「いや、海の男が、海上で死ねるなんて本望です。ルナ様達は、この天変地異を収めるためにジスパ島へ赴くのでしょう?今のままでは、何人が犠牲になるか分からない。犠牲になったベンの事は気にかけず、早く天変地異を何とかして下さい」

「…わかったわ。…ベンさん、ご冥福をお祈りします」


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