第25話 会話
第25話 会話
僕は、一人でゲリュートに向かって歩き出した。
ゲリュートは、深紅の鱗を持つ10m程になる巨大な竜で、威圧をするように僕を凝視している。
僕は気合いを入れ、そして一つ深呼吸をしてから、ゲリュートに話しかけながら近づいていった。
「偉大なる竜のゲリュートよ、僕は女神サリア様に異世界より召喚された者です。ここへ来たのはあなたの財宝を奪いに来たのではありません」
「ほう…、確かに女神様の召喚者のようだ…。しかし貴様が盗人ではないとどのように証明する?」
「証明するのは、実際の行動で示すしかありません。話を伺い終わったら、速やかにここを去りましょう」
「それを信じろというのか?」ゲリュートは魔力を高め、僕を威圧した。
僕はそれを無視し、話を続けた。
「最近のピレーネ山の噴火と、300百年ぶりにあなたが眠りから覚めたことは、関係がありますか?」
「その質問が我と話したいことか?」
「それだけではありませんが、話したい重要な一部分です」
「ふん、偉大な古竜たる我が、矮小たる貴様の話につきあう必要は無い」
ゲリュートは大きく口を開けた。
口の奥に炎が揺らめいている。
炎のブレス攻撃だ。
僕はすかさず、時空間スキルを発動し、時間を停止させた。
そして、ゲリュートの頭部まで跳躍し、その両目に手裏剣を突き刺した。
そして頭部の上に移動すると、時間の停止を解除した。
*
我が、炎のブレスで矮小なる存在を消し去ろうとした瞬間、訳も分からないまま両目を潰されてしまった。
しかも、その存在は不遜にも我の頭上に乗っている。
屈辱だ、屈辱極まりない!
怒りに我を失いかけたとき、頭頂より頭蓋骨を砕かれ、我は気を失ってしまった。
*
それを見ていた僕の仲間達がやって来た。
「レン…、駄目じゃないの?ちゃんと話を聞き出さなきゃ」
「ごめん。何だか攻撃しようとしてたから、つい反撃しちゃった。気がつくまでに治療をしておくよ」
「あら、それは私がいたしますわ」とイオタ。
「じゃあ、任せるよ。目が覚めると、また攻撃してくるかもしれないから、みんな下がっておいて」
そう言うと、僕は右人差し指に魔力をチャージしはじめた。
イオタもシュプリームヒールを唱えると、下がっていった。
しばらく待っていると、ゲリュートは目を開けた。
「偉大なる竜のゲリュートよ、話をして貰えますか?」
「貴様は、我に何をした?」
ゲリュートは先ほどのことを思い出しながら、また怒りがこみ上げてきたようだ。
長い尻尾を上手く使って、大きな身体を起すと、また威圧をかけてきた。
仕方が無いか…、少し脅してみよう。
「また、死にかけたいんですか?それとも死にますか?」僕は問いかけた。
「偉大なる我に何を無礼な…」
ゲリュートは再びブレス攻撃をしようと、大きく口を開けた。
僕は尊大な態度のゲリュートの右目に向かって、魔弾を発射した。
魔弾は狙い通りに着弾し、右目を破壊した。
「また、死にかけたいんですか?それとも死にますか?」僕はもう一度同じ質問をした。
……ゲリュートはブレス攻撃を途中で中止した。
「汝はいつでも我を殺すことが出来るというのか…。よかろう」
「ピレーネ山の噴火と、我が眠りから覚めたことは、直接的には関係がない。しかし間接的にはある」
「というのは、どういう事ですか?」
「精霊の働きに異常を来しておる。今のままだと、これからも自然が猛威を振るうだろう。我は命令をはねのけた。しかし、不快故に目が覚めた」
「それは、古竜たるあなたや精霊達に、何者かが命令を与えたということですか?」
「是」
「命令は何処からなされているか分かりますか?」
「否」
「そうですか…。自然の猛威を止める術はありますか?」
「ある。極東の島にいけ」
「極東…分かりました。あなたは、これからどうするのですか?」
「我は眠いのだ…」
「分かりました。そのまま眠って下さい。目は治療しておきますから」
読んで頂き有り難う御座います。宜しければ、高評価、ブックマーク登録をお願いいたします。