第20話 喪失
第20話 喪失
それから、どのようにして迷宮の外に出たのか、どのように宿舎に戻ったのか、全く覚えていない。
目が覚めると、エライザが横にいた。
頭がはっきりしてきて、メンデスのことが心配になった。
起き上がろうとすると、エライザが心配そうに尋ねてきた。
「レン、大丈夫?」
「大丈夫。ありがとう。他のみんな達は?」
「メンデスは疲れているだろうから、一人部屋で寝ている。ルナ達は、一部屋に集まって寝ているわ」
「メンデスの精神状態が問題なかったら、ルナ達を紹介しないといけないな…。…えっ、一部屋?ゲイリーは?」
「レン…、何も覚えていないの?」
「えっ、何のこと?」
「そう…」
私たちは、誰一人喋ることもなく、ただ淡々と迷宮を歩いていた。
幸いにして、魔物達が現れる様子はなく、重い足取りながらも、みんな無事に迷宮から外に出て行けると思っていた。
その時だ。
突然、地面が、迷宮が大きく揺れた。
私たちは、立っていられなくなり、しゃがんで揺れが止まるのを待った。
しかし大きな揺れは、地面を引き裂いた。
足下の地面が大きく裂け、丁度そこにいたメンデスを、深い闇の底に飲み込もうとした。
誰も動くことが出来なかった、ただ一人ゲイリーを除いては。
大地が揺れる中、ゲイリーは落ちていくメンデスの手をつかんだ。
大きな揺れで誰もが動けない。
ゲイリーは自分の危険を顧みず、懸命にメンデスを引き上げようとしている。
大地はまだ揺れている。
ゲイリーは、メンデスを何とか引き上げることに成功した。
しかしその時、ふと気が緩んだのか、バランスを崩してしまった。
地面の裂け目に落ちて行くゲイリー。
それは一瞬の出来事で、誰も助けることが出来なかった。
「ゲイリー!!ゲイリー!!」
ゲイリーを呼ぶ声が、迷宮に響き渡った。
しかしいつまで経っても、返答はなかった。
僕が地面の裂け目に下りていこうと決心したとき、また地面が大きく揺れた。
裂けていた地面は、今度は閉じるように動き、隙間は消えてしまった。
ゲイリーの後を追いかけることも出来ず、ゲイリーの遺品を回収することも出来なかった…。
「レン、思い出した?」
「あっ、うん…。ゲイリーはメンデスの身代わりになってしまったんだね…」
「ゲイリーは、レンにすごく感謝していたわ。レンの大切な仲間を救うことで、その恩に報いたかったのかもしれない…」
「…僕は無力だ…。結局、大切な仲間を失ってしまった…」
「…」
メンデスに、ルナ達に会わないといけない。
みんなと話をしなければいけない。
時間は巻き戻ってこないのだ…。
「エライザ、みんなの所に行こう」
「うん」
*
これは、とある一室での会話。
「その後、どんな感じ?」
「うん、正規のルートは外れたけど、おかげで何とかなりそうだよ」
「そうか…、良かったな」
「ありがとう」
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