第14話 天変地異
第14話 天変地異
僕はベックの迷宮に向かって歩いていた。
もう少しで迷宮にたどり着くというところまでやって来たとき、突然に強風が吹いてきたかと思うと、それまで晴れ渡っていた空が嘘のように厚い雲に覆われ、突然の嵐模様となった。
しばらく歩いて行くと、遠くで雷鳴が轟きはじめ、だんだん近づいてくる。
ついには、頭上で稲光が光り、雷鳴が轟き、周囲の動物や魔物の気配が消えさっていった。
今は風の音だけが耳に響いている…。
一瞬、その風も止んだかと思うと、突然地面が大きく揺れ動いた。
轟音と共に、立っていられない程の大きな揺れがしばらく続いた。
僕は膝をつき、揺れが収まるのを待った。
ようやく揺れが止まったと思ったときには、周囲の風景は一変していた。
木々は倒れ、地面はいくつもの断層を生じ、崖の一部は崩れ落ちている。
これほどの大きな地震は、日本にいたときにも経験したことがない。
みんな大丈夫だろうか?
咄嗟に、僕は分身体と入れ替わり、エライザとコンタクトを取った。
「エライザ、大丈夫だった?」
「あれ?レン入れ替わったの?先ほど、地面が大きく揺れて、怖かったわ。でももう止まったみたいだし大丈夫」
周囲の様子をみて悟った。
「…こちらの方が揺れが小さかったみたいだね。他のみんなも大丈夫?」
「見て来ようか?」
「ちょっと待って。ベックの迷宮付近では凄い揺れで、倒木が散乱し、地面が割れて大変な状況なんだ。迷宮内も心配だから、すぐに向こうに戻るよ。ルナ達が大丈夫なら、エライザもみんなを連れて、すぐに向かってくれない?救助が必要かもしれない」
「分かったわ。人手が要るかもしれないのね。みんなの状況を確認次第、すぐにみんなを集めて出発するわ」
「お願いするよ。じゃあ一足先に戻るよ。また後でね」
僕は再び分身体と入れ替わった。
急いで、ベックの迷宮に向かった。
ベックの迷宮の近くには、冒険者ギルド直営の小さな宿泊施設がある。
まずは宿泊施設に入り、ギルド職員に状況を確認した。
「Aランク冒険者のレンさんですね。ベックの迷宮にいくつかのパーティーが挑んでいたのですが、迷宮内で崩落があったとの報告があります。至急に迷宮の探索をお願いします」
「あの、メンデス達は…。ライジング・サンのメンバーの安否は分かりませんか?」
「ライジング・サンは、地震発生時に迷宮に潜っていたことが確認されています。その後の安否の確認は取れていません」
「!!僕もすぐに迷宮に向かいます。エライザという僕の仲間が、やって来ると思うので、状況を伝えてください。では、行ってきます」
「承知しました。これは迷宮のマップです。崩落で迷宮内は変化していると思いますが、役立つかもしれません、どうぞ。それではお気をつけて」
僕はマップを受け取り、迷宮に入った。
迷宮内はあちこちで崩落が起き、またいつ新たな崩落が起こるか分からない状況で、簡単には進んでいけない。
マップを確認すると、かなり状況が変わっているが、大枠では変化があまりなく、十分に有効利用できると思われた。
僕は、慎重に状況を確認しつつ、崩落に巻き込まれた人や取り残された人がいないか、探しながら奥へと進んでいった。
「誰かいませんか?いたら返事してください。救助に来ました」
迷宮の魔物を刺激するかもしれないが、そんなことはお構いなしに、大声で叫びながら進んだ。
僕の声だけが、むなしく響いていた。
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