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第9話 手術 1

第9話 手術 1

手術は段取りが大切だ。

今回も完璧に準備が進んだと思う。

滅菌や消毒が必要なものは、すべてルナにクリーン・アップの呪文をかけて貰った。

ゲイリーに麻酔のかわりのスリープとペインキラーの魔法を唱えた。

少し深めに眠りを設定しておく。

手術を開始した。

今回は腹部の真ん中に、縦に大きな切開を入れた。

腹部の筋肉の左右丁度真ん中を切開すると、上腹部では筋肉を露出せずに済む。

下腹部では筋肉が露出してしまうが、これを傷つけないようにして、その下の膜に到達し、これの一部を切開して開腹した。

腹部臓器を傷つけないように気をつけながら、切開を広げた。

お腹の壁が邪魔にならないように、特注で昨日作って貰ったリング状の金属をはめた。

癌を確認すると、やはり癌はS状結腸の壁の外側まで露出しており、腹水がたまっている。

「ここが癌の部分だね。分かるかな?」

「これが癌…」

「普通はこの部分を含めて、口側、肛門側とも長めに切除するんだけどね、今回はその必要はなさそうだね」

「どうして?」

「ちょっと難しい話になるけど、聞きたい?」

「ええ、教えて欲しいわ」

「分かった。長めに切除する理由は二つあるんだ。一つは転移の問題。もう一つは血流の問題」

「癌のリンパ節転移って聞いたこと無い?」

「あるわよ」

「リンパ節転移は、癌細胞がリンパ管の中に入り込むことで起こりうる転移だけど、S状結腸ではそのリンパの流れは二つの系統があるんだ。一つはこの血管、これは大腸を栄養している動脈だけど、これに沿って中心に向かっていく流れ、もう一つの系統は腸管の長軸の二方向、口側と肛門側に沿って行く流れ」

「つまりその方向にリンパ節転移が起こる可能性がある訳ね」

「ご名答。検査では転移の有無が完全に分かるわけでは無いから、転移の可能性が統計的に高いリンパ節をあらかじめ取ってしまおうという考えだね。それで通常は長めに切除する必要がある」

「じゃあ血流っていうのは?」

「血管沿いのリンパ節を取る際に、そこに伴走する血管もどこかで処理、切除してしまうんだ。だから、血流が悪くなる部分が発生する。それを切除するという意味合いもあるんだ」

「今回は、転移が無いことが分かっているという訳ね。だから小さい切除で良いと…。それなら血流の問題はどうなるのよ?」

「それは、後のお楽しみだね。さて、これで癌を含めて腸管が切除できた」

「見事な手さばきね。でも手術中にこんなに雑談していても良いものなの?」

「雑談していても、手術には何の影響も無いね。むしろ、それくらいの余裕が無ければ、手術なんて出来ないよ」

「そんなものなの…。ところで、その血管や腸管をシールする技ってどうやって身につけたのよ」

「これはシーリングシステムって言って、前世にあった方法を魔力で再現、応用したものだよ。タンパク質の熱凝固って聞いたこと無い?」

「茹で卵がかたまるってやつよね?」

「そう、そのことを応用しているんだ」

「成る程…」

「切除した部分の周囲を鑑定してみて。知識が増えた分、鑑定できるものが増えているはず」

「分かったわ…。…成る程、癌の塊は無くなっているわ。でも離れた部分の二カ所に癌の塊が残っているわね」

「その通り。ここが腹膜播種性転移の部分だよ。取っておこう」

「これで、癌の塊はすべて切除できたね。鑑定して確認してみて」

「本当だ。もう塊は無い」

「次は、目に見えない細胞レベルの癌の除去だね。僕がお腹の中に魔法で水をみたして洗うから、ルナさんは、水ごと癌細胞を除去するイメージでクリーン・アップの魔法をかけて」

「分かったわ」

僕達は、お腹の中の洗浄を十回程繰り返した。

「ルナさんも慣れて上手になったね。エライザもありがとう。ちょこちょこ手を出して手伝ってくれているのが、凄く役立っているよ」

「さて、ここからがもう一つの肝になる血管内の癌細胞の除去だ」


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