第4話 出会い
第4話 出会い
上陸すれば直ぐに良くなると考えられたゲイリーの体調だが、しばらく経っても良くなる様子がなかった。
私たちは心配な気持ちのまま、鉱山都市にたどり着いた。
ゲイリーは、ここ何日も食事が十分にとれていない。
顔色は目に見えて悪くなってきているように思う。
「オリビア、この世界には病気を診断したり、治す所はないの?」
「私たちの国にはないし、おそらくここにもないと思う…」
「何度も治癒魔法をかけたけど、効果がないし、本当にどうすれば良いのかしら?」
「…済みません。心配をおかけして…」
町の中をしばらく移動していると、私の索敵スキルで、二人の手練れが近づいてきているのが分かった。
「みんな気をつけて、手練れが二人近づいてくるわ。大人しく静観していましょう」
しかし向こうもこちらに気づいているようで、こちらにどんどん近づいてくる。
その時、ゲイリーが急に立ち止まって、吐きそうにしている。
「ゲイリー、大丈夫?ちょっと脇に避けて座りましょう」
通りの端に移動し、人目を避けようとしたが、相手の手練れはそのままこちらに向かってくる。
こんな所で戦闘なんて出来ないわ…。
逃げる?でもゲイリーがいるから無理ね…。
しらを切るしかないかしら…。
*
僕達は、ユリアス山脈の西側を北上し、トゥーレの迷宮から比較的近い鉱山都市ドゥーハンにやって来た。
すると、僕の索敵スキルで、魔族の存在が確認された。
「エライザ、たとえドワーフ王国であっても、魔族がユリアス大陸にいるのはおかしな事だよね?」
「そうね。でも、ドワーフ王国は魔族と鉱物の取引をしているという噂があるわ。もしかしたら、それは本当のことかもしれないわね」
「それなら、善良といって良いのか分からないけど、戦闘目的ではない可能性があるのか…。とにかく近づいてみよう」
「分かったわ。ここで戦闘は出来ないから、穏便に行きましょう」
「分かっているよ」
僕達はゆっくりと魔族に近づいていったが、魔族の一人の様子が何だかおかしい。
「何だかあの魔族は体調が悪そうね」
「うん、よく見えないが、痩せこけているようにも見える…。放っておけない、声をかけてみよう」
「慎重にね」
「分かっているよ」
僕はゆっくりと魔族に近づき、その中の一番年上に見える女性に声をかけた。
「突然のことで、失礼します。そちらの方の体調が優れないようですが、お手伝いできることはありませんか?当方には、少し病気に対する知識があります。もしかしたら、お役に立てる事があるかもしれません」
僕が声をかけると、驚いた表情を見せ、それから近くにいた紫色の髪の少女と目配せをした。
「お気遣い有り難う御座います。でも、自分たちで何とかします、お気遣いなさらぬよう」と薄紫色の髪の少女が答えた。
「…そうですか…」
僕はサイレススペルを唱えた。
「いきなり魔法をかけるとは、何するのよ!」
「これは失礼。これは僕達の会話が聞こえなくする魔法です。害はないから安心して。話を聞いてくれませんか?」
「…分かったわ」
「君たちは魔族ですね?」
「…」
「ここでは戦うつもりはないから、安心して下さい。僕には鑑定スキルがあってね、それで、その人の病状が分かると思います」
「私も鑑定スキルがあるけど、そんなこと聞いたこともないわよ。本当なの?」
「ああ…もう砕けたしゃべり方で良いよね?何なら一回試してごらんよ。でもその前に、この往来の激しい場所でそんなことは出来ないから、宿泊施設に移動しないか?」
「あなたは、私たちが魔族と知っていても、助けてくれるというの?」
「そうだよ。僕も正直どうするか迷ったんだけど、病気で苦しむ人を放っておけない」
「…分かったわ。今は信じるわ」
「それじゃあ、どこか宿泊施設に移動しよう」
「分かったわ。みんな、そういう事だからついて行きましょう」
「分かったわ」
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