第3話 上陸
第3話 上陸
「勇者ルナ様、私が船長のジャックです。国王陛下より、勇者様ご一行をユリアス大陸までお運びする仕事を賜りました。宜しくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いするわ」
「ルナ様、ユリアス大陸といっても広い大陸です。どこか運んで欲しいご希望の場所は御座いますか?」
「すまない。知っているだろうが、勇者ルナ様は異世界から来られたお方だ、ユリアス大陸のことはほとんどご存じない。どこか適当な場所はあるか?」
「そうですね、それなら、私の知る範囲でユリアス大陸の情報をお伝えします。その上で相談しましょう」
「それはありがとう」
「ユリアナ大陸には五つの国があります。ユリアス大陸の中央部に位置する、大陸一の大国リベリス王国。その東にあるのが、砂漠の国ムーア国。リベリス王国の西側にあり、大陸二番目の大国である諸国連合。その諸国連合の北に、レットン帝国とドワーフ王国があります」
「リベリス王国はサリア教を国教としており、最終的にはここに行かねばならないかもしれませんが、いきなり行くには危険が高すぎます。ムーア国は遠くなりすぎるのでお勧めしません。従って、レットン帝国、ドワーフ王国、諸国連合のいずれかが候補に残ります。この中でも、諸国連合は小国の集合国家で、複雑な状況となっており、伝え聞くところによると、リベリス王国の傀儡のような国もあるらしく、情報が少ない私たちはやはり避けた方が良いかと思います。そうすると、レットン帝国かドワーフ王国となりますが、レットン帝国は情報がほとんどなく、判断することが出来ません。一方ドワーフ王国ですが、ユーノス島で産出した鉱物の輸出をこの国に行っており、比較的我が国とも交流があります」
「それならば、ドワーフ王国に運んで貰いましょう」
「承知いたしました。どうせ、リベリス王国へ行かれるのであれば、リベリス王国との国境近くまでお運びしましょう。このアーバイン号は、ジュリアス号と比べると質素な船ですが、その分スピードが速いのが特徴です。それでは、船旅をお楽しみください」
私たちは、その後一週間をかけ、ユリアス大陸の近くまでやって来た。
この二、三日間、ゲイリーの調子が悪いようだが、本人曰く、船酔いだろうとのことで、放っておいた。
しかし、いよいよ小舟に乗り換えて、上陸しようという状況になっても、ゲイリーの調子は戻らず、食欲がないためか、やつれて見える。
「ゲイリー、本当に大丈夫なの?」
「…大丈夫だと思います」
「ゲイリーはこのまま引き返したら?」
「それは出来ません。船酔いごときで、勇者様についていけぬなど、言語道断です。上陸すれば良くなるでしょう」
「ゲイリー、本当に大丈夫なの?無駄かもしれないけど、治癒魔法をかけてみる?」とイオタ。
「ありがとう。でも、それは効果がないと分かっているよ…」
「ゲイリー、ユナは寛大よ。ここで戻っても問題ないのよ?」
「分かっているさ。これは僕自身の問題だ」
「…そう?」
「それなら、小船に乗り換えて、出発するわよ」
「分かりました」
私たちは手こぎボートに乗り換え、ユリアス大陸の北にある海岸まで到着した。
「船は誰にも見つからないように隠しておきましょう。さて、この後どうしましょうか?」
「ゲイリーの調子が戻るまでは無理が出来ないわ。この近くに宿泊できるような所はないかしら」
「ジャック船長の話によると、このまま南に下れば、迷宮があって、その近くに鉱山都市があるのだとか…」
「それでは、ゲイリーの体調が戻るまで、そこに滞在しよう」
「はい。国王陛下より賜った、ドワーフ王国の貨幣が十分にあります。しばらく滞在しても、問題はないでしょう」
「そうね。それじゃあ出発しましょう」
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