第57話 戦闘
第57話 戦闘
僕達が戦闘の準備を始めつつ、階段を上がっていくと、三階の奥に玉座が二脚見えてきた。
その内の一脚には異形の悪魔が座して、僕達を待っていた。
「待って!」玉座に向かおうとした僕達を、ルナが制止した。
そして、僕達を制したままルナが歩き出す。
僕は不意を突かれ、一瞬の間、思考停止してしまった。
その間にも事態が急転する。
突然に時空間の歪みが生じたかと思うと、ルナがかき消されるように、いなくなってしまった。
「ルナ!」僕達は口々に叫ぶが、返事は返ってこない。
それどころか、透明化の魔法がかかったカーテンが突然開けられたかのように、僕達の目の前に、アーク・デーモンが四体、音もなく現れた。
あらかじめ、気配を隠して、魔法で隠れていたのかもしれない。
僕は気合いと共に、剣でアーク・デーモンに斬りかかろうとした。
その直前に、オリビアがニュークリア・バーストの魔法を炸裂させた。
アーク・デーモンは、四体とも魔法の範囲内に入り、炎に包まれ焼かれている。
僕は、一旦攻撃するのを諦め、炎が消えるタイミングを計ることにした。
魔法の炎が弱まってくると、今度はイオタがホーリー・エクスプロージョンを四体のアーク・デーモンに炸裂させた。
戦闘が始まっていきなりニュークリア・バーストの魔法をくらい、魔法の炎に耐えきれるかと思ったところに、ホーリー・エクスプロージョンである、流石のアーク・デーモンも瀕死の状態に追いやられた。
僕は初手から奥の手の一つを使った。
無数の突きを複数の敵に瞬時にたたき込む、烈風剣を放ったのだ。
目に見えない程のスピードで、鋭い突きが無数に放たれる。
弱っていた三体のアーク・デーモンが、避けることも出来ずに、無数の突きにさらされている。
程なくして、三体のアーク・デーモンはあえなく消失した。
残ったもう一体のアーク・デーモンは、その間にも呪文を唱えつつ、錫杖のような武器で僕に攻撃を仕掛けてきた。
僕は何とかそれを剣で受け止めた。
しかしその直後に、詠唱は終了し、アーク・デーモンがファイア・ストームの魔法を発動した。
魔法範囲に入ってしまった僕とオリビアが魔法の炎に包まれてしまった。
僕は、身体の一部を炎に焼かれながらも、魔法発動後の一瞬の隙を見逃さなかった。
気合いを入れると共に痛みに耐えながら、剣で何度も斬撃を加え、アーク・デーモンを仕留めることに成功した。
「大丈夫?回復魔法をかけるわ」
イオタが僕とオリビアに回復魔法をかけてくれた。
魔法を受け入れながら玉座にいる魔王の王に目を向けると、魔王は僕達が来たときと同じ状態で座っている。
「ルナはどこに飛ばされたのかな?どうする?私たちだけで魔王に戦いを挑む?」
魔王は動かないままである。
それを良いことに、僕達はこれからのことを相談しようとした時、時間が停止した。
*
時空間の歪みを感じた瞬間に、私はテレポーテーションさせられた。
飛ばされた先の目の前に、魔王が座していた。
そして、すでに魔王が時を止めていることに気づいた。
思考は出来るが、身体を含め周囲の何もかもが動くことはなかったからだ。
魔王はゆっくりと立ち上がると、呪文の詠唱をはじめた。
聞き慣れない詠唱だ。
この世界には存在しない異世界の魔法?
私は、このまま為す術がないのか?
時は止まっている、スペリオル・グラヴィティを使うべきか?
その詠唱は間に合うのか?
今唱えて、本当に効果があるのか?
考えている間にも、詠唱は進んでいく。
時間を稼ぐために、少しやけ気味に、スロー・タイムを発動させた。
しかし、何も変わらない。
時間が止まっているのだ、その流れを遅くすることは出来ない。
それならば、これではどうだ?
私は賭に出た。
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