第49話 情報
第49話 情報
「ルナ、どうしたの?考え込んで…」
「あら、ごめんなさい。魔王との戦闘のことを考えていたのよ。どのような作戦が良いのかってね…」
「それで、良い作戦はあるの?」
「ううん…。良い作戦が思いつかないの。というより情報不足で、どうしたら良いか分からない状態ね。何を優先すべきか分からない。さっきはターミネーターを取りに行こうと言ったけど、それが良いのかも分からなくなったわ」
「ルナ…」
「魔王はね、ほぼ間違いなく時魔法を使えるわ。そうするとね、私は、最終的には一対一で魔王に勝たなければならないの」
「一対一?私たちも戦うわよ!」
「ありがとう。勿論みんなの助けは欲しいよ。でも、時を止めた世界での戦いは、私にしか出来ない。みんなには、私がその戦いに有利に臨めるように手伝いをして欲しい。一対一で魔王に勝たなければならないというのはそういう事」
「確かにそうよね…」
「悔しいが、それは事実だろう。でも、できる限りの助力はする」
「わたしもよ!」
「みんな…ありがとう。それで、一対一での戦闘でどう戦えば良いか分からないのよ。ニュークリア・バーストの魔法だけで勝てるのか?剣で戦って勝てるのか?全然分からないのよ…。ドラゴン・ロードでさえ、二発のニュークリア・バーストの魔法に耐えたわ。魔王には何発必要なのかしら?魔王を倒すことが出来る魔法が、他にあるのかしら?」
「ルナは時が止まった世界で二発のニュークリア・バーストを発動させていたの?」
「そう」
「私には認識できなかったから、知らなかったわ…」
「それでようやくルナの気持ちが分かった。私たちの知らない間に、私たちの想像以上に、凄く頑張っていたのね…」
「ねえ、イオタ。あなた、女神ベス様から神託を受けることは出来ないの?」
「オリビア、それは無茶というものよ。私たちの都合で、そんなに頻回に女神様のお手を煩わせることは出来ないわ。そうよね?イオタ?」
「やれやれ…。私はそんなに狭量では無いわ」
「えっ、女神様…?」
「今、この娘の身体を借りて、顕現したの。少し話をしましょう。ルナ、召喚の時に言ったとおり、私の第一の望みは、魔王を討伐することではなく、サリアの眷属に勝つこと。正直なところ、サリアの眷属にさえ勝ってくれれば、魔王は放置しても、何も問題にならないから。その反面、私の眷属達が、魔王の討伐を望む気持ちもよく分かる。だから、そちらをまず片付けるように言ったのよ。でも、もしそれで躓くようなら、話にならないわ」
「魔王の情報を分かる範囲で教えるわ。魔王は、悪魔族の上位種であるケイオス・ストームよ。剣での攻撃は効果的ではないわね。魔法主体で攻撃をしないといけないわ。ただ、ルナが苦労する相手ではないはずだった。だから放置していたのよ。でも、ルナの気持ちが分かったから、念のため、先ほど神の目を使って情報を収集したのよ。すると、とんでもないことが分かったの。それで、顕現したわけよ」
「女神様、そのとんでもないというのは?」
「神の目は、いくつかの例外を除いて、この世界にあるものは何でも見通すことが出来るの。それで魔王を観察したんだけれど、魔王はこの世界で生まれたものではなかった。何者かが、外からこの世界に送り込んだものだったのよ。しかも、それだけではなく、神の目を持ってしても、魔王の本質を見抜けなかったの。それは、私と同格か、格上の神による隠蔽がなされているということを意味するわ。例えば、私がサリアの眷属との戦いに有利になるように、サリアの眷属の切り札たる者のスキルやレベルなどを含めた本質を見抜こうとしても、サリアに隠蔽されているから出来ない。それと同じようなことが起こっているの」
「では、魔王は、女神サリアが呼び出したものだということですか?」
「それは違うわ。サリアは正義と公正を司る女神。サリアがそんな事をするはずがないわ。他の神の仕業でしょうね…」
「他の神様…」
「普通のケイオス・ストームならルナが負けることがないけど、魔王は特別なようなの。だから一つヒントを授けるわ。ルールに反しないギリギリの範囲でね。ここから北に進んだセントレア湖畔に助けとなる魔法があるわ。それを収得しておきなさい。私が言えるのはここまで。頑張ってね。後、魔王との戦いの前にもう一度会いましょう。レベルを更新してあげるわ。じゃあね」
女神ベス様がそう言うと、イオタは崩れ落ちそうになり、それをゲイリーが受け止めた。
しばらくしてから、イオタが目を覚ました。
女神様の情報で、私たちが次に目指すべきものがはっきりした。
心の中で、改めて女神様に感謝を申し上げるルナであった。
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