第36話 歌声
第36話 歌声
ゲイリーが狩ってきたオーク(豚)を食べながら、明日の予定について話し合っていた。
「マップから予想すると、第三層に上がった階段を、西に行くのが正解なようね」
「今日は、そっちには行けずじまいだったからね。何かあるならそっちだろう。異論はないね」
「それより問題は、第二層のボスね。あんなに苦労しているようじゃ駄目だわ」
「もう少しレベルが必要かしら?」
「いや、戦い方の工夫で何とかなるんじゃないか」
「そうね…。魔法で、オリビアのニュークリア・バーストで、先手をとれれば有利に戦闘を進められるわ」
「テレポーテーションして、あのタイミングで出てくるとは思わなかったから、後れを取ったけど、今度は大丈夫。タイミングさえわかっていれば、先にぶちかますわよ」
「オリビア、頼もしいわね。でも、ルナティック・ロードは、魔法の耐性が低そうだったから、エンカウントしたら直ぐにスロー・タイムを発動させて、スリプルの魔法で眠らせるわ。そこでニュークリア・バーストの出番ね」
「無詠唱は便利で良いわね。眠りに落とすまで、何度も唱えるんでしょ?」
「そうね。二・三回も唱えれば、眠りに落ちるはずよ」
「じゃあ、概ね作戦は決定ね」
次の日、迷宮にやって来た私たちは、予定通りに進んでいった。
第二層のボスであるルナティック・ロードも、対策を練っていたので、それほど問題なく倒すことが出来た。
これには少しばかり自信となった。
「やっぱり、対策を立てておくのは大切ね。ルナティック・ロードを、あれほどたやすく倒せるなんて…」
「ニュークリア・バーストの威力は流石ね。早く私も覚えたいわ」
「ルナは、無詠唱でニュークリア・バーストの魔法を発動できるようになる訳ね…、恐ろしいわ。ニュークリア・バーストの魔法を連発したら、ほとんどの魔物は生き残れないはず…」
少しオリビアの顔色が優れないようだが、ここは気にしないでおこう。
私たちは、第三層に上がる階段を上ってきた。
「ここは西に進む予定だよね」
「そうね。さて、何かあるかな?」
私たちは、西の通路を進んでいった。
しばらくいくと、通路は右に曲がっている。
その角を曲がると、やっぱり長い通路が続いている。
「マップからの予想だと、この長い通路は、ダークゾーンの手前まで続いているかもね。また飛ばされたりしないかな?あの感覚嫌いなのよね」
「どうだろうね。どっちにしろ、進んでいくしかないよ」
魔物を倒しながら進んでいくと、通路は行き止まりになっている。
そこで、テレポーテーションの罠が発動することはなかった。
その代わり、行き止まりの壁に何かスイッチのようなものがあった。
「これは何かのスイッチのようね…。シュートの罠を解除できれば良いんだけれど…」そう言いながら、スイッチを押した。
私たちは、今来た道を戻って、階段の所までやって来た。
「ここからは、昨日と同じルートを進みましょう」
階段の所を今度は東に進み、折り返して、西にしばらく進むとテレポーテーションの罠が発動した。
飛んだ先はダークゾーンとなっている。
「ダークゾーンの途中に何もないのはわかっているから、急いでダークゾーンを抜けるわよ」
私たちは、魔物に警戒しながら、ダークゾーンをどんどん進んでいった。
しばらく行くと、ダークゾーンの先の方から、かすかに何か聞こえてくる。
「ちょっと止まって。何か聞こえない?」
「何か聞こえるね…。女の人の声?」
「いや…、これって歌じゃない?」
「どうして迷宮内で歌なんか…?」
確かによく聞いてみると、迷宮では不似合いな歌声が聞こえてきた…。
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