序章&第1章 第1話
序章
それは遠い遠い過去のこと。
光も、音もない、…何もない場所。
突然に現れた淡い二つの光。
一方は、ほんのりと赤く柔らかな光点。
他方は、青白くどこか涼しげな光点。
それらはゆっくりと点滅しながら、徐々に大きく明るくなっていく。
やがて二つの柱となったその光が突然消滅したかと思うと、それと同時に顕現した二柱の女神。
女神A 「…ここで良さそうね。どう、ベス?」
女神ベス 「…そうね、ここで良いわ。じゃあ、予定通りに創るわよ。サリア」
女神サリア 「ええ」
……………
…それから悠久の時が流れ…時は光の時代…
第1章
第1話 目覚め
心地良いそよ風が頬をなぞった…。
ざわざわと風に揺れる草の音。
どこからか聞こえてくる小鳥のさえずり。
意識がはっきりしないままに、ゆっくりと瞼を開ける。
「…まぶしい!」 瞳に差し込むうららかな日差しとともに、広がる青い空と白い雲、風に揺れる黄色い花が見えた。
「…ん?ここは?」寝転んだ状態のまま左右を見てみる。
緑の茎の上の黄色い向日葵が風に揺れている。
「何だ?俺は一体…」思い出そうとすると、頭にもやがかかったようになり、何も思い出せない。
「くっ」ふらつきながらも立ち上がり、周りを見回す。
そこは、お椀を伏せたような形の小高い山の山頂付近だった。
山は向日葵の群生地となっており、胸ほどの高さの向日葵以外は、所々に大きな岩がある程度で、他に何もない。
そして山の周りには、ただひたすら大森林が広がっている。
「一体どうなっているんだ…」思い出そうとしても、やはり頭にもやがかかって、何も思い出せない。
仕方がないので、思い出すのを諦め、現在の状況を把握することにする。
もう一度、じっくりと辺りを、今度はもっと遠くまで見回す。
すると、高く上った太陽の方角、遙か遠くまで続く大森林の向こうに、何かが見えた。
「あれは?」 目をこらして見てみる。
「うわっ‼」突然視界が望遠鏡をのぞいたように拡大される。
「何だ、これ!」驚いて視線をそらすと、普通の視界に戻っている。
「…もう一度やってみよう」再び目を凝らすと、やはり拡大されて見える。
さらにもっと目をこらしてみると、さらに拡大されて見え、そこに村があることがわかった。
「あれは村だよな。かなり遠いな。でも良かった、村には誰か人がいるに違いない」人の存在を考えると、少し安堵の気持ちが芽生えた。
しかし、ほっとしたのもつかの間、山頂の反対側のここからは見えていない向こう側に、何かの気配を感じた。
「今度は何だ?」気配を探ると、まだ何も見えていないのに、なぜかいろいろな情報が頭に入ってきた。
「あれは!豚の怪物?…オークか!やばい、隠れなきゃ」とりあえず近くにあった岩陰に隠れ、もう一度気配を探る。
オークが二体、こちらに歩いてくる。
まだ気づかれていない。
「魔物がいるのか?ここは異世界か、何かなのか?このまま気づかれずにやり過ごせるだろうか…」少し頭が混乱している。
「…とにかく落ち着け…」オークが来るのには、まだしばらく時間がありそうだ。ゆっくりと深呼吸をして、気持ちを落ち着かせる。
……………。
まだ少しドキドキするが、何とか落ち着いてきた。
整理して考えよう。記憶ははきりとしないが、ゲーム内でしか魔物なんていなっかたように思う、ここは異世界なのだろうか。
そして俺は転生者…?で、転生者の俺には、いくつか特殊な能力がある…。
遠くを見る能力に気配を察知する能力。
他にもあるかもしれないが、今はまだわからない。
そして、今はオークが近づいてくる危険な状況だ。
だが、まだ相手はこちらに気づいていない。
このまま気配を消してやり過ごすしかなさそうか…。
息をこらし、気配を消して、じっと隠れている。
次第にオークが近づいて来ているのがわかる。
大丈夫、まだ向こうには気づかれていない。
オークは山頂を越え、目視できるだろうところまでやって来た。
さらにこちらに向かって歩いてくる。
ドキドキする。
大丈夫だ、自分に言い聞かせる。
しかしそのとき、まるで僕をあざ笑うかのように、一陣の風が俺の横を通りすぎていった!
「…うん?餌の匂いだ!おう、兄弟よ!あっちから餌の匂いがするぞ!」
「本当だ、兄弟よ。グゥエへへへ、ご馳走だぜー。」
しまった!気づかれた。
もう10mほどの距離に迫ってきている。
走って逃げるか?だめだ、追いつかれてしまう。
…どうする…どうする?オークってファンタジー世界で弱い魔物だったよな?一か八かだ、やるしかない。
気持ちを奮い立たせると、岩陰から飛び出した。
一気にオークとの距離を詰めるべく走る。
速い!体は軽く、信じられない速さでオークに迫っていく。
オークの動きはスローモーションのように緩慢だ。
やれる!一気に近づき、一匹のオークの鳩尾に手拳をたたき込む。
ドコッ!オークは信じられないほど吹っ飛んだ。
もう一匹に目をやると、まだこちらに反応できていない。
何だかよく分からないが、体が自然に動く。
あたかも、そうするのが当たり前であるかのように、手刀をオークの首に叩きつけた。
スパッ‼。
気がつくと、それは致命的な一撃となり、オークの首がはねられていた!
でもまだだ…、さっきのやつは?先ほど吹き飛ばしたオークを確認する。
…反応がない。
死んでいるのか?良かった!何とか助かった。
安堵とともに、尻餅をつくようにへたり込んでしまった。
しばらく呆然とした後、改めて戦闘を思い返してみる。
身体は風のように軽く、速く動いた。
その上、相手の動きは信じられないほど緩慢に感じられた。
これは、身体が強化されている影響と認知能力が高くなっている影響のせいなのか…?
それに手刀で首をはねるなんて!これは俺の能力?いわゆるスキルなのか?
分からないことだらけだ。
でも、驚きや疑問とともに、なんとなくこの世界でもやっていけそうな気がした。
空を見上げる、陽はまだ高い、今からどうしよう。
やはり、人がいるだろうあの村を目指すべきだろうな。
今すぐに出発したら、森で夜を過ごさなければならなくなる。
でも森は深く広大で、明日の朝に出発してもそれは変わらなさそうだ。
善は急げだ。
俺はもう一度村の方角を確認すると、山を下り始めた。
初めての投稿です。ぼちぼち頑張りますのでよろしくお願いします。