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~3~ 謎のメール


 「っという訳で! 手に入れましたマイスマホ~ッ!」


 学校が終わった放課後、俺は近所のファミレスで購入したばかりのスマホを高橋と四条へお披露目大会を開いていた。


 「わっ。 それ最近出たばかりの新機種ですよね! いいなぁ~!」

 「へ~よかったね」

 「四条さんナイスリアクション! それに比べて高橋クン? 何だいそのリアクションはそんなんじゃ彼女出来ないよ」

 「安心してくれ。 俺には勿体ないくらいの恋人は隣にいるから」

 「・・・」

 

 四条さんは嬉しそうな感情と恥ずかしさの感情が合わさった表情で照れていた。

 それを見て高橋は微笑み、気が付いたら2人だけの空間が広がりつつある。


 「やめろよぉぉぉッ! 俺の前でイチャつくんじゃねぇよぉぉッ!!!」

 「泣くな泣くな」


 大粒の涙を流しながら勇也に睨みつけらる高橋は面倒くさそうな顔を向ける。


 「それで? わざわざ学校じゃなくてファミレスに俺達を連れてきたんだ。 何か話があるんだろ?」

 

 そうなのだ。

 さっきまで勇也達はあのオカルト研究部とされている教室にいたのだが、突然勇也がファミレスに行くと言い出してわざわざここまで足を運ぶ形となった。


 「え? だってまだやってないだろ?」

 「やってないって・・・何を?」

 「俺の退院祝い」

 「よし明音さん。 帰ろう」


 無慈悲に帰宅しようとする高橋の足に勇也はしがみつく。


 「なんだよ友人の退院祝いくらいしてくれてもいいだろ! 何をそんなに嫌がる事があるんだいマイフレンドッ!」

 「うるさい。 星山ほんとうるさい」

 「辛辣すぎるッ!!」

 

 あまりにも冷たい態度に心が折れそうになったが、またも微笑ましそうに見ていた四条が高橋の腕を引っ張る。


 「あんまり意地悪をしなくてもいいんじゃないですか? どうせ星山先輩の退院祝いはする予定だったんですし」 

 「・・・え? マジで?」


 意外な言葉に勇也は驚きながら高橋の顔を見上げる。

 これだけ冷たい態度をとられたものだがらこういうイベント事はしたくないのかと思っていたのだが。


 「・・・チッ」

 

 耳を真っ赤にしながらも舌打ちをする高橋。

 なんだコイツ、ツンデレかよ。


 「おい。 声に出てるぞ」

 

 声に出てた。


 「私もそう思います」

 「明音さん・・」


 恋人に指摘されて更に顔を真っ赤にして、高橋は落ちそうになるメガネを整えて席に座った。


 「だけど星山先輩、私達まだ先輩の退院祝いのプレゼントを買えてなくて。 それで龍也くんが祝いの品が出来るまでは先延ばしにするって聞かなくて」

 「おいなんだよ高橋~おい高橋~そういう事はさきに言えよ高橋~」


 そこまで考えて祝ってくれるとは考えてもおらず、思わずニヤニヤとした顔で高橋の肩を叩くのだが。


 「は? 四ね」

 

 ものすごい表情で睨みつけられた。


 「違うんです~! ホントは退院祝いをしてもらいたかったわけじゃなかったんです~!」

 「それじゃあどうしたんですか?」


 明音は首を傾げながら勇也への疑問を尋ねる。

 

 「いや、その本当はさ。 久しぶりに友人とこうして学校の外で駄弁りたかっただけ」

 「・・それだけ?」

 「そ。 それだけ。 だってさ。 俺、ホントは死んでるかもしれなかった人間じゃん」

 「「・・・」」


 勇也の言葉に、2人は思わず言葉を呑み込む。


 「だからこうしてさ。 なんの理由もなく友人と学校の帰り道のファミレス寄って適当に喋って、そんんで『またあした』っていう日常がさ。 なんとなく実感したかったんだよ」

 「それじゃあ、私いなかった方が良かったんじゃ」 

 「いやいやいや逆だよ! 四条さんも高橋の恋人云々じゃなくて俺の友人の1人として一緒にこうしたかったんだ」

 「そうですか? だったらよかったです」


 明音は心底嬉しそうな表情を浮かべて安堵する。

 その様子を見て高橋は小さく息を吐くと、ポケットから自分のスマホを取り出した。


 「ほらよ」

 「うん?」

 「連絡先。 どうせ新しく買い替えたんだから俺の登録消えてるだろ」

 「あ、そういえば」

 「それじゃあ私のも交換しましょ!」

 「え? マジで? おねしゃす! 高橋に泣かされたらいつでも俺に言って!」

 「おい。 俺はそんな事はしない」

 「え~? ホントでござるか~??」

 「こいつッ!」


 そんな馬鹿なやり取りをしながら、俺達はお互いに連絡を交換した。

 それから俺がいない間の学校の事や高橋と四条の馴れ初めを聞こうとしたが、お互い照れて全く話してくれなかった。

 

 「いや~それにしても喋ったな~!」

 「はい! まさか2時間も居座るとは思いませんでした!」

 「星山が無駄に俺達の事を聞こうとするから」 

 「だって気になるじゃんッ! どっちが先に告白したかくらい教えてくれてもいいじゃんッ!」

 「「・・・」」

 「ほら~! 2人とも照れて何も喋ってくれねぇからこっちも意地になっちまうんだよ~!」

 「それよりも星山、受験は大丈夫か?」

 「勉強なら私も教えられるところは教えますからね! 先輩ッ!」

 「待って、その話の方向は俺の心の傷をえぐる」


 そうして俺達は途中の道で分かれた。

 高橋は明音を家まで送るのでここからは俺は1人で帰宅する。


 「星山!」


 帰ろうとした足を止めて呼び声のあった高橋の方を見る。 


 「()()()()()


 隣で明音も小さく手を振っているのが見える。

 その光景に、俺は何故か涙が流れそうになるくらい感情が高ぶりそうになったが、必死に笑顔を取り繕って大きく手を振り返した。


 「おぅッ! また明日ッ!!」







 ―――ピコンッ。


 その夜、謎のメールが一件受信された。

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