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~2~ 転校生


 後日、無事に病院を退院した俺は数か月ぶりに学校へ登校する事が出来た。

 学年が上がり教室やクラスメイトも違って少し戸惑いはあった物の、全員が知らない生徒でもなかったおかげで慣れるまでにそれほど時間はいらなかった。

 新しい担任の先生や進路指導の先生にも今後の話を親と交えて話、気が付けば久しぶりの登校はあっと言う間に放課後となっていた。


 「お母さん。 先帰ってて」

 「あら、どこか行くの?」

 「うん。 ちょっと挨拶に」


 下駄箱の前で母親と別れ、俺は速足で階段を駆け上がる。

 3階に到着して一番奥側の教室。

 そこには手書きで創られたポスターが貼られている。

 記載されている内容は【ようこそ、オカルト研究会!】だ。


 「おーす。 久しぶり~」


 俺はノックをすることもなく普通に開ける。

 すると教室の中から驚いた表情でこちらをみる2人の生徒がいた。

 1人は俺も知らない女子生徒。

 ある程度のクラスの顔は知ってるから、見覚えがないという事は後輩だろう。

 そして、その女子生徒の前でノートパソコンを開けてメガネをかけてるのは友人の高橋くんだ。


 「・・・星山?」

 「おう。 元気してたか? 高橋」


 高橋は驚いた表情のまま落ちそうになったメガネを整え席を立つ。


 「そっか。 今日は一日中皆が君が学校に来ていると噂してたけど、無事に退院できたんだな」

 「そうだよ。 まったく。 友人が奇跡の生還を果たしたっていうのに見舞いの1つも来ないんだから。 薄情な奴だよお前は」

 「仕方ないだろう。 学校からも無闇行くなと念押しされてたんだから」

 「ふ~ん。 それで? 久しぶりに会った友人にいう事は?」

 

 高橋は少し笑みを浮かべて右手を顔まで上げる。

 俺もそれに合わせて右手を上げてハイタッチしてお互いに手を握り絞めた。


 「お帰り。 無事でなによりだ」

 「おう。 ただいま」

 

 高橋とは別に幼馴染でも深い絆のある親友という訳でもないのだが、何故か中学に上がって初めて会った時から高橋とは気が合っている。


 「・・・おい?」

 「ん?」

 「いい加減放してくれないか? しかもちょっと握る力が強いような・・・」

 「はっはっはっ。 気のせいだろう?」

 「いや、マジで痛ぇ。 え? なに? なんかちょっと怒ってる?」

 「え? いやいやまさか。 オコッテルワケナイジャナイデスカ」

 「お前がロボット口調の時は感情を殺している時なんだよ! なんだよ何が気に食わないんだよッ!」


 必死に手を振り払おうとする高橋だが、残念だったな。

 数か月眠っていたとは言え元剣道部の俺にとれば文系の貴様に俺の握力から逃げ切れるわけがないだろう。

 俺は満面の笑みを浮かべながら、今日ここに訪れた理由を言葉にする。


 「お前彼女が出来たんだって?」

 「・・・・なんで知ってんだよ」


 ハイ、〇刑確定☆


 「ちょっ! 痛い! マジで痛いッ!」

 「痛くて当然だバカ野郎ッ! いいか! 俺は今のお前の数百倍に心が痛いんだよ! これがなんでかわかるかッ!」

 「しらねぇよッ!」

 「俺よりも先にオカルト野郎のお前に恋人が出来た事が悔しくてだよッ!」

 「知るか筋肉バカッ! それこそ俺に関係ないだろうがァァァッ!!」


 それから数分、高橋の罵倒と勇也の雄叫びが続いた。

 お互い無駄に暴れたせいで息を切らして床に倒れ込み息を整える。


 「それで、誰なんだよ」

 「はぁ? な、何がッ?」

 「お前の~~~~~~~彼女~~~~だよぉぉぉぉッ」

 「血の涙流しながら言うな。 はぁ。 彼女だよ」

 「ん?」


 すると高橋は呆れた表情をしながら背後に指をさす。

 そこには高橋と勇也の無駄なやり取りを一部始終眺めて微笑んでいた女子生徒だ。


 「・・・・この子は?」

 「彼女は2年1組の四条明音(しじょうあかね)さん。 お前が事故にあった1か月後に転校してきた後輩だよ」

 「ほぉ?」

 「それでその・・俺の彼女・・です」


 高橋は照れくさそうに顔を背けながら紹介を終えると、四条はその様子を微笑ましそうに見ながら立ち上がる。

 

 「2年の四条明音です。 星山先輩の事は龍也くんからいつも聞いていました。 本当に楽しそうな人ですね!」


 礼儀正しい口調。

 どことなく分かる品のある雰囲気。

 そして何よりも後輩だと思えない綺麗な顔立ち。

 何処から見ても、まるでファンタジーな世界から訪れた美少女そのものである。

 最初は俺よりもさきに恋人を作った高橋を制裁する事しか考えていなかった為、あまり意識していなかったが、こんな恋人がいればこれからの学生生活は謳歌する事を約束したも同然のものである。


 「―――せない」

 「ん? なんだって?」


 小さい声で何かを呟いた勇也に高橋は耳を近づける。


 「許せないぞぉぉぉぉお高橋ィィィィッ! 貴様には一発ではなく数発の鉄拳制裁の刑をお見舞いしてやるわぁぁぁぁあッ!」

 「ぎゃあぁぁぁぁああッ!!?」


 そうして俺は血を吐きながら高橋の弱点である脇を容赦なく突きまくった。

 

 

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