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~1~ 生還


 中学2年の冬、俺は事故に合った。


 理由はながらスマホで車で運転していた運転手の不注意事故だ。

 学校に通う信号待ちをしていた時にスピードを落とさずに突っ込んできた車と接触。

 ただ部活で剣道を習っていたおかげなのか、それとも俺の運動神経がよかったおかげなのか分からないが、俺は車と接触しながらも自分から空中に飛んで衝撃を流してしたらしい。

 吹き飛ばされて地面へ衝突する瞬間も鞄で頭を守っていたというのだから、聞けば聞くほど俺って実はすごい奴なのではないかと自己評価をあげてしまった。


 事故に合って目が覚めた時、俺は知らぬうちに中学3年になっていた。

 クリスマス前に事故にあった事は覚えていたので、なんと約5か月もの間眠っていたのだ。

 雪が降っていた空は肌が焼けるような直射日光を放出しており、まるでタイムスリップしたような感覚でちょっと中二病感な気持ちになったのは誰にも言えない。

 

 「それにしてもよかったわ~目が覚めて。 アンタもしかしたら二度と目が覚めないかもとか先生に言われてたんだからね」


 慣れた手つきでリンゴを切ってくれる母親が本当に安堵した表情をしている。

 どうやら結構危ない橋を渡っていたらしい。


 「だけど目が覚めてから脳に異常も見られないから経過を見て明後日には退院できるかもだって。 よかったわね!」

 「マジで! よっしゃ!」

 「あら、すごい喜びよう」

 

 そんな物当たり前である。

 だって病院食ってとんでもなく味が薄いのだ。

 こっちは育ちざかりの中学生よ?

 もっと肉が食べたいわけよこっちは。

 

 「それだけの元気があれば大丈夫そうね。 学校の先生も協力してくれるって言ってくださってるし、お父さんもお母さんも出来る事はするからね!」

 「ん? なんで学校の先生?」

  

 切ってもらったリンゴをかじりながら首を傾げる。


 「だって勇也。 今年は受験生よ」

 「・・・ジュケンセイ?」

 「そうよ? 同年代の子達とは半年以上も勉学に差があるけれど高校受験はなんとか間に合うだろうって先生が・・って、どうかした?」


 高校受験。

 それは本来、俺にとってはまだ少し先の話だと思っていた人生に置いてのターニングポイント。

 それが目が覚めるとすぐ目の前にまで迫っている?

 そんな事があっていいのか?

 別に勉強が嫌いってわけではない。

 ただ、勉強した努力があまり報われる事がない為、あまり得意というわけではないのだ。

 そんな俺に残り数か月で同年代達に追いつき、更には高校受験を想定した勉強をしろと?


 「・・お母さん」

 「ん?」

 「俺、あと一年は眠っとくわ」

 「何言ってんの?」


 母親は俺の考えが見え透いたらしく座って視線を向ける。


 「だってさっきまで中学2年生だった俺にいきなり高校受験の勉強なんて無理だよ! 不可能だよ!」

 「だから学校の先生が協力してくれるっていってるじゃない」

 「断る!」

 「そんな胸張って断っても駄目よ」

 「じゃああれだ! 推薦入試ってやつで受験します!」

 「出席日数が足りないから無理じゃない?」

 「なん・・だとッ」


 絶望した。

 俺にはもう、選択肢などないんだと断言された事に。

 

 「・・ッ! まだだ!」

 

 だが、俺は諦めきれなかった。


 「調べれば何とかなるはずだ! 世は正にネット時代! ありとあらゆる不可能な現状を打破してくれる情報がありふれているインターネットで高校を調べれば! 俺のような状況に陥った人間を受け入れてくれる学校があるはずだ!」

 「すごく情けない事を言ってる自覚ある?」

 「ちょっと反省してます!」


 まさか死の淵から帰って来た息子にこんな事を言われて情けなく思った母親から哀れんだ顔を向けられるとは思っておらず、少し自分の発言に後悔した。


 「だがしかし! 俺は止められないぜマイマザー! 俺はやり遂げてみせる! だからスマホプリーズ!!」

 「・・・え?」

 「・・・ん?」


 何故か母親は聞こえないふりをする。

 

 「いや、だから俺のスマホ。 目が覚めてからまだ触ってないし家に置いておいてくれてるんでしょ?

 だからお願い! 明日持ってきて!」

 「そういえば聞いた? アンタのクラスメイトの高橋君、彼女出来たんだって!」

 「何故そんな雑な話題の変え方で話が逸れると思ったのかは分からないが高橋は復帰したら一発殴る」


 高橋、抜け駆けは許さないぜ☆


 「じゃなくて! はいスマホ!」


 母親の前に差し出して自分のスマホを追求する・・が何故か母親はものすごい目を泳がせて動揺している。

 

 「うん・・そうよね・・スマホ・・ね・・うん」

 「? なに? なんかあった?」


 もしかして事故の際に故障してしまったのだろうか?

 だが問題ない。

 クラウドにちゃんとバックアップはしてあるしスマホ本体さえあればどうとでもなる。

 そう考えてボロボロのスマホが出てくる事を想定していた。



 ・・・のだが。


 「あのね・・勇也のスマホ、無いのよ」

 「ユウヤノスマホナイノヨ?」


 俺はロボットのような口調で母親の言葉を復唱した。

 

 「アンタが事故にあった際ね。 警察の人達が勇也の荷物を全部集めてくれたのだけど、何故かスマホだけが見つからないままなのよ」

 「・・・ナンダッテ?」

 「事故をした車がね。 アンタが立ってた場所の電柱にぶつかって止まったんだけどそのまま車が燃えちゃってね」

 「モエチャッテ?」

 「運転手の人は無事なんだけど、その警察の人はその燃えた車と一緒にもしかしたら跡形もなくスマホも―――って勇也ッ!」


 俺は意識が遠のき、気絶するように病院のベッドに眠った。


 そうか・・俺のスマホ・・消えたのか・・

 俺が小学校から培ってきたお年玉と家の手伝いで稼いだ小遣いをすべて培ってきたアプリゲームのデータ、キレイさっぱりに消えてしまった・・・。

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