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初恋の価値は

11月11日(月)AM6:30起床

目覚ましの15分前にはバッチリと目が覚めていた

顔を洗いに洗面台へと向かう、目線が低い。。

鏡を見て改めて小学生4年なのだと実感する

歯磨きを終えてから朝食の準備

情報番組を付けて時間と天気を確認しつつ

朝食はコーンフレークを牛乳で流し込み、着替えてから学校へ向かう

少し早すぎたかもしれない。

7時半、ホームルームは8時ちょっと過ぎだったはず

まぁ人少ない教室で昨日定まった今後の方針に付いて細かく調整していればあっという間だろう

天気予報のお姉さんが言っていた通り、例年よりも少し早い、真っ黄色に染まった通学路を歩く

身体が小さいせいか見上げると空が黄色なのかと勘違いしてしまいそうなほどに


学校までの道のりはもっとあっという間だった。



校舎に着き下駄箱で自分の上履きの場所を探すのに少し手間取る。事前に4年2組であったことはランドセルの名札に記載されていたのを確認している。

自分の上履きの棚を見つけて履き替える瞬間

スニーカーの土の香りと下履き特有のゴムのニオイが入れ替わる時に放つ独特なニオイが記憶中枢の何かを刺激するのか、急激に懐かしさを感じて泣きそうになる


こんな下駄箱のニオイで涙腺が緩むのか


校舎1階が低学年。2階が中学年。3階が高学年の教室となっている

もともと高齢化が進んでいることから、介護施設に移行できるような構造の建物だ

あと20年もしたら介護施設に切り替わる

「閉校セレモニーには同級生と行ったんだったなぁ」


バリアフリーの対策がおおく見られる校舎の廊下横には広い多目的スペースがある。

下履きを脱いで利用する場所なのだが、廊下を歩くとここのカーペットのニオイがまた、涙腺を刺激する


2階に上がり自分の教室の前に立つ

なんか緊張する

黒板側の前の扉を開けて入ると、机の香り、黒板のニオイ、泣きそうなんですけど!


教壇の辺りまで進んだ時に鈴が鳴った

ちょうど左後ろに振り向く形で鈴の音の方向を見る

廊下側の後ろの席に座っていたことで、視界に入らなかったようだ

そこには黒く長い髪をなびかせた少女が座っていた

鈴の音の正体はこの少女のおはようの声だったようだ

「リョウくん、こんな早くに珍しいねー」


ドクンッ


「…マナちゃん」


ドクンっ


古く閉ざされた心の奥の扉が鳴動する


芳賀「あっ前の呼び方に戻ってるー」


ドクンっ!ドクンっ!

強く、強く、幾重にも施錠されている扉の鍵が鳴動とともに弾けていく


芳賀「え?泣いてる??どうしたの??」


なんで忘れていたのだろう


「いや、なんでもないよ。おはよ」


そうか、忘れてたというより


芳賀「そっか、今日は何か用事でもあったの?」


あの時、鍵をかけたんだ


そしてこの気持ちを深く深く沈めて


「鍵を探しに来たんだ」


芳賀「鍵?」



「そう。でももぉ見つかったから大丈夫だよ」


鍵は全て弾け

重い扉が開かれていく

そこには、あの日二度と溶けることはないと思われた凍てついた感情があった

今は全てを燃やし尽くすような勢いで光を放っている

その光は毛細血管の隅々にまで行き届き


そしてここでの『役割』を理解する


昨晩決めていた方針通り進めれば間違いなく数百億いや数千億という財を手に入れることすら可能

だが、それはこの少女がいない世界であればの話だ


あの救いようのない事故をなかったことにできるのは

ただ一人しかいない


『あぁ…そーゆーことだったのか』


いくら音量ボタンを最大にしてもダメ。設定からサウンド欄を確かめて音が出る設定を確認してもダメ。いっこうに動画から音が流れないことで、故障と考えてショップに持って行っても、ろくに調べもせず新しい機種の案内しかされない、もやもやしている帰りに家電量販店に立ち寄って、そこの携帯スタッフに聞いたら、消音ボタンをオンにしていると指摘され、ものの30秒で解決した時のような、しこりがごっそりとれた感覚



少女の顔を今度はしっかりと見つめる


少し怪訝な顔でこちらを見る少女


それとは正反対に清々しい顔で笑った



「電気着いてないから一番だと思ったのになぁ」

教室の電気を着けてから自分の席を探す

イスの後ろに大きく名前が書かれているのでそれとなく確認しながら少女の前の席が自分の席であることを確認して、ランドセルを置く


芳賀「最近私がずっと一番乗りなんだよー」


「なんか理由があるの??」

芳賀「ナイショー」

ニシシと笑う少女の秘密を俺は知っている。


「帰ってから宿題やるのが嫌だから朝来てやってるとか?」


芳賀「宿題はちゃんとやってるよぉ。昨日の算数プリントと漢字ドリルの34、35。ほら!」

机にしまってあった宿題を取り出して誇張する


あ。やば、それは俺が忘れてるわ

「おぉー!女神様!!早起きは三文の徳とはこのことだったのですね!写させてください!!」

仰々しく奉るように両腕を挙げてから頭を下げるのと同じように下げる



芳賀「なにそれぇダメですよーしっかり自分の力でやりなさぁい」

「女神様のいじわるー!」

芳賀「リョウ君が宿題を忘れていたことを思い出させるために私はいたのです!」


「あんまりだぁぁあ」

わめきながら宿題を急いで取り出し

慌てたフリをしながら宿題を片付ける

ホームルームまではあと20分弱

なんの問題もないだろう

漢字ドリルは5分で始末し算数プリントの処理に入る


あれ??ちょっと難しくない?!?!

面積の値を求める問題とがい数の問題


小4レベルの問題に苦戦する自分の知力に嫌気が差す

がい数とは???

上から2ケタのがい数で表すってなに?

12778000のがい数。

筆が止まっていると後ろから

芳賀「がい数って、だいたいこれくらいってことだから、上から2ケタの、とか求められたら3桁目を四捨五入して答えをだすんだよぉ」


マジ女神


最終問題。正方形の中に入っている正方形の面積を除いた面積を求める問題を解いたところで、ちょうどホームルームが始まった。

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