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宰相の執務室へと私とギデオン、そしてアルマイトはやってくる。

こんな夜遅くまで仕事している父のもどうかと思うが、入室して見た父の顔は想像以上に元気そうだった。

いや、先の夜会の話が伝わっていて、婚約破棄出来そうだと上機嫌なだけだったらしい。

「夜会のことは聞いている。大変だったな、キャシー」

私は父の労りの言葉に驚く。

ナイヴスとの婚約破棄は歓迎していなと思っていた。

「私としてもあれの義理の父親にならなくて済むと思うと清々するよ」

ナイヴスの評価はよっぽどだったらしい。

けれど、正当な理由なくナイヴスとの婚約破棄もできないし、私の後に据える令嬢の選定も大変だ。

父として、宰相として、その心中は大変悩ましいものだったようだ。

「では、ナイヴスとキャシーとの婚約は破棄の方向で?」

喜びを隠せてないアルマイトを、父はギロリと睨む。

「再び王家に娘をやるとは限りませんよ、アルマイト殿下」

父に睨まれ、アルマイトが肩を竦める。

「じゃあ、王家を捨てて、キャシーを連れ去るしかないかな」

たとえ私とアルマイトが婚約しなくても、今回のことでナイヴスの王太子擁立は無くなるかもしれない。

というか、17歳にもなってナイヴスが王太子になれてないこと自体おかしかったのだ。

多分、王妃は今夜の夜会で私とナイヴスとの関係を見せつけ、王太子へと決定付けたかったのだろう。

アルマイトよりナイヴスの方が次世代の支持が多ければ、それだけでも説得力を持つ。

それを失敗したとなれば、アルマイトの王太子擁立の声が大きくなる。

そうなれば、アルマイトは王妃やランバルト侯爵達から命を狙われることになるだろう。

この国に二人しかいない王子が一人になれば、ナイヴスが王太子になるしかないのだから。


「アルマイト殿下とキャシーのことは置いておいて、どこかに隠れることは必要じゃないか?」

ギデオンが父の方を見る。

「今、マリーナ様を秘密裡に逃がしているところだ。アルマイト殿下はしばらくこの部屋に留まってもらい、様子を見て王宮を出てもらう」

さすがに父の仕事は早かった。

私達がこの部屋に来る前に、アルマイトの母親であるマリーナ側妃を後宮から逃がす手配をしていたらしい。

「アルマイト殿下はこのまま私の侍従のフリをして、王宮から連れ出します」

「それが良いか…」

ギデオンの提案に、父は考え込むように顎に手を置く。

今は何よりもアルマイトの安全の確保が大事だ。

「アルマイト殿下はギデオンと共に王宮を脱出して、ハーディング侯爵家に身を寄せてもらおう」

「なるほど。王妃の夜会に合わせて、ハーディング侯爵家を訪れていたことにすれば良いと」

父と息子の連携プレーで知恵が出されている。

「アルマイト殿下は、陛下が外遊からお戻りになられるまでそちらに身を寄せておいて下さい」

「ご配慮ありがとうございます、公爵」

アルマイトの返事に父は満足して頷く。

「陛下がお戻りになるまで、あと一週間ほど。それまでにどうするか知恵を絞らなければ」 

父の眉間の皺が深くなる。

「いくらあの方が日和見であっても、王であることには変わりない」

「陛下がキャシーとナイヴス殿下の婚約破棄を認めない可能性もあると?」

重い空気がこの場を支配する。

「陛下は王妃様には逆らえませんからねぇ…」

ため息しか出ない。

王が無能でお飾りでも、肝心なことに口出しされて権力行使されたらたまらない。

「本当に、我が王家は腐っているな」

その腐ってしまった王家の影響を受けて、アルマイトは今まで苦労してきた。

継承権を持った王子なのに、王妃の妨害でまともな教育を受けさせてもらえなかった。

そんな状況も国王は見て見ぬふりだった。

アルマイトは国王の実子なのに、王妃怖さに放置されたのだ。

後宮では彼を守る者も支援する者もおらず、そこで見かねたハーディング侯爵家がアルマイトの後援となった。

「いっそ、アルマイト様が王になればいいのに…」

ポツリとギデオンが零す。

ハーディング侯爵家支援の元、アルマイトは勉強と騎士訓練を頑張り、今では王としての資質がナイヴスよりもあるとまで言われるようになった。

「そうだな……」

アルマイトが天を仰ぐ。

「だけど、私には王になるには足りない…」

たとえフォードム公爵家がアルマイトに付いたとしてと、王妃とランバルト侯爵派閥を抑えるには心許ない。

「それよりお父様。そろそろ王宮を出ないと…」

「そうだな、アルマイト殿下を探されてはたまらない。キャシーは私と共に」

私が王妃に捕まる危険性もあるから、私は父と共に同じ馬車で家に帰ることになった。

「ではまた、連絡する」

「お気をつけて、アルマ様」

私は父のエスコートを受け、アルマイトとギデオンを残して部屋を出た。


そして、この日の夜はふけていった。


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