一章 第一話
花月《かづき》の朝は早い。
夜が明けきれぬ間に起き、手早く身支度を整え、巫女装束を纏う。
本堂を掃除して、境内を掃き清め、朝の祈りを捧げる。
ひと段落つけば制服に着替えて、朝食を済ませ、そのまま学校へ。
そう、彼女は名もない神を祭るこの神社の神主である。
長い年月をかけて一人の神を祭っていた一族・夜神《やがみ》の末裔である。
もともと数少ない信仰者。長くにわたる血縁者の婚姻で寿命も短い。
その結果、この小さな社を守るのは花月ひとり。
それでも毎日を慎ましく過ごしていた。
・・・・・・過ごしていた、はずだった。
学校を終え、高く結っていた髪をおろし、普段通りに巫女装束に着替えた。
そう、普段通りだったのだ。
ただ何となく、境内の空気がざわついていたのは、感じていた。
それがまさか。
「・・・・・・他の世界に渡るとは思いませんでした」
気づけば花月は草の上に座り込んでいた。
御神木は境界線、と小さなころから聞かされていた。
むろん、それを越えようとしたことはない。
幼いころ、一度だけ世界を渡ったが、その時、自分は透けていたし、今のようにはっきりと音や景色を認識できなかった。
どうしよう、と思ってもどうにもならない。
あたりを見渡しても人気はない。それに、日も暮れようとしていた。
けれど不思議と怖くはない。
いつも境内で感じていた高貴な気配が、より近くにあるような、そんな気がして。
ざわ、と木々が揺れた。
その音に二人の男が顔を上げる。
「神域に、不審者だ」
「いかがいたしますか」
「任せる・・・・・・だが、ただものではあるまい」
「そうですね。あの神の、領域に入り込んだのですから」
「危険ならば迷わず殺せ」
頬づえをついた男は冷徹な表情をぴくりとも動かさず、目の前にいる男に命じた。
男は溜息を一つ返し、そして静かに膝を折った。
「仰せのとおりに―――帝」
勢い余って書いてしまったオリジナル小説・・・
物語上神がどうたこうたらと書いていますが宗教とは一切関係ありません。
勝手に作り上げたものですので、不快に思われたり、おかしくね?と思われたりするかもしれませんが、そういう方は閲覧を控えてください。
全然OK!というかた、稚拙な文章ですが見てやってください。
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