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白結の巫女

 その夜。

私は、ふと、目を覚ましました。


 常夜灯が灯るだけの薄暗い部屋。

確か左側に時計があった…。

 そっちを見ると、午前二時。草木も眠る丑三つ時……。


 うん? 私しかいないはずの、部屋の中…。

でも、他に誰かいるような気配……。


 だ、誰!!


 時計と反対側。

右横に視線を移すと、暗がりに浮かぶ、あの白髪白髭の老人と女の子!


 思わず叫び声を上げそうになった私に、老人は指を一本立てて、「シー」のポーズ。

私は上げかけた叫び声を、ゴックンと飲み込みました。

 普通なら、そのまま大声で叫ぶべきところなのに、何故か……。


「儂は、戸隠中社に坐ます天思兼命あめのおもいかねのみことと申す。

此度は我が社での事故、誠に相済まなんだ。

若い身空で千円も賽銭を入れてくれたのでの、御籤で二度忠告したのじゃが、ダメじゃったのう」


「か、神様……。う、嘘…」


 布団に横になった状態から体を起こします。


「嘘ではない。儂は神。天思兼命じゃ」


「思兼命様…。ほ、ホントに??

御籤で忠告って……。あ、あれか……」


 あの二枚の正体不明の御籤は、まさに神様からのお告げだったのです。

しかし…。


「あ、あのですね。あれじゃ、分かりませんよ……」


 書いてあるのが、「大凶」と「大当たり」だけでは、何のことか分かるはずが無い。

確かに、木の枝大当たりで大凶なんですけど……。


「済まぬ、済まぬ。儂も慌てておったのじゃ。

でな。ちょこっと、其方にとって大問題が起きた」


「はあ?」


「其方、覚醒してしまったのじゃ」


「へ?」


 覚醒??

 あ、まあ、今、目を覚ましたとこですけど、そういった事じゃないよね。

全く意味不明なんですけど……。


「儂らの姿が見えておるじゃろう?声が聞こえておるじゃろう?」


 確かに、見えています。聞こえています。


「儂らは、普通の人間には見えぬ」


 見えない……。


 そ、そうです。

あの夕御飯の時!

この二人に誰も気付いていませんでした。

みんな、まるで、誰もいないようにしていた……。


「其方は神と人とを結ぶ存在。白き姿の結びの巫女『白結(しらゆい)の巫女』じゃ。その力が覚醒したのじゃ。

そして、この力は、悪しきモノに対しても同様に効力を発揮する。じゃから、対抗手段を持っておらぬと、悪しきモノに狙われることになりかねん。

悪しきモノも見ることができ、関りを持つことが可能となるからな…」


「そ、そんな!!」


 いきなり、そんな訳の分からない事態を突き付けられても困るんですけど!


「うむ。これは仕方ない。まあ、考えようによっては運が良かったかもしれぬぞ。いつ覚醒することになるか分からなかったのじゃ。変なところで覚醒して居れば、大変なことになっておった。

儂の目前で覚醒した其方は運が良いの。ラッキーガールじゃ」


「止めてよ、私の口癖盗るの! ラッキーなんかじゃないです!」


 全く、なんで私の口癖知ってるの?

あ、神様だからか……。


「まあ、そう言うな。其方、仕事を求めておったであろう?

千円の賽銭も貰ったからな。其方に仕事を授ける。

神から授かる仕事じゃ。心して承れ」


「し、仕事って、どんな?」


「なに、簡単なこと。この子を憑けてやるから世話をせよ。

この子も神じゃ。この子と一緒に居れば、其方に悪しきモノは近づけぬ。

ちょうど良い」


「せ、世話!? だいたい、仕事っていうのは、それをして報酬を得るものでしょ。それじゃあ報酬なんて出ないじゃない…」


「何を言うか。この子は其方の身を守ってくれるのじゃ。

それ以上の報酬を望もうなどと、不届き至極。

これは神の命じゃ。断れば神罰が下るのもの心得よ」


「ひ、ひえ~!! あ、あんまりだ~!!パワハラだ~!!

そ、それに、世話って言われても、どうすれば良いのですか?!」


「それに関しては、自分で考えよ。まあ、直ぐ分かるし、難しいことは無い。

それより、この子を紹介しておく。この子は、スサノオの隠し子じゃ。

あのスサノオの子じゃからな。途轍もない力を秘めておる。こんな強い神が憑いて居れば、悪いモノは近づけぬ。どうじゃ。安心じゃろう?

では、まあ、そういうことでなああ~~」


 へ? 消えた……。


 白髪白髭の老人は、スーッと消えてしまいました…。

一方的に、神の命令を下して……。


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