神の思惑
私は当然ですが、この日は咲夜ちゃんにも夜へ出歩かないようにと注意してあります。
咲夜ちゃんも「結の巫女」なのですからね。
彼女には狐神さんがついていますが、強力な神のビンちゃんが留守なのです。何かあっても助けられません。
あ、咲夜ちゃんは現在、水屋の二階に住んでいます。石段と階段を上った不便なところですが、景色は最高ですよ。
まあ、今は夜。田舎の夜は真っ暗。特に今日は月も出ていませんからね。景色もヘッタクレもありませんね。
ビンちゃんは、そろそろ戸隠に着いたころかな。
そんな時間を見計らってなのか…。なんか、急にトンデモナイ威圧感が……。
だ、誰?
邪神の襲撃じゃないよね?!
これって、ビンちゃんの代理の神様の「気」ってやつですか?
い、いったい、何者?!
壁をすり抜けてズカズカ入ってきましたよ。
う、デカイ!それに、筋骨隆々、ゴツゴツしてやたら厳めしく、髭モジャのムッサイ神様。着ているものは豪華だけど…。
でもさ、女子の部屋に男が勝手に入ってこないでよね!
「お前がハルカか。娘が世話になっておる。その娘の代理を頼まれてきた」
ええっ、娘?
ということは、ビンちゃんのお父さん……。つまり、スサノオ様?!
「おい、ハルカ。我も食事と風呂を所望だ。すぐに用意せよ!」
は、はい~っ!?
そ、そんな急に申されましても!!
でも相手は傍若無人・乱暴・狂暴で有名なスサノオ様。高天原で悪行を繰り返し、追放されてしまったという前科持ち。逆らったりしたら、どんなことになるか…。
アノ思兼ジジイ。なんて神様よこしたのよ!
食事は握り飯程度で結構だとのこと。いきなり豪華なモノ要求されても無理ですからね。その辺りはわきまえていてくださるようで助かります。
お店で疲れているのに申し訳ないのですが咲夜ちゃんにも事情を話し、お風呂の方はお願いして沸かしてもらいます。
私の方は、オニギリと味噌汁を大急ぎで作ります。買い置きしてあった養老漬けも切って、お酒も…。
母屋の座敷に座布団を用意してスサノオ様にお坐り頂き、御膳をお出しします。
まずは一献。お先に私が失礼しまして、その同じ盃でスサノオ様に……。
う、う~ん、目つきが鋭い。なんか、とっても怖いんですけど!
でもビンちゃんの御父上様なんだから、大丈夫……な、はず……。
「ふむふむ、どれだけぶりの酒であろうか。
う、う~む、これは美味い!」
よ、よかった、怒られるのかと思った……。
はい。では、御漬物もどうぞ。この地の名産、養老漬けでございます。
「お~う。これは、これは。なんとも良き味。堪らぬわ!」
あら、笑顔は素敵じゃありませんか。怖い顔してないで、最初からそんな顔で来てほしかったですよ。
はい、お酒。
え?こんなチビチビでは飲んだ気しない?
なるほど、承知いたしました。
では大きいドンブリを用意しまして、これにちょっとだけお酒を注いで、まずは私が…。
そして、なみなみ注いで、スサノオ様のお口に運びます。
あ、あら、あら、あら…。
クイクイクイ~ッと、ドンブリ酒を一気に飲み干しちゃった。
いよっ、男だね!って、私が一気に飲ませたんだけど。
それに、男と女でこんなことしてて、何だか三三九度でもしてるみたい……。
お酒はもういい?
あ、はい、では、オニギリです。具は我が家の梅干しですよ。
オニギリは私が直接持ちますので、先に私が食べる必要が無い。神様に差し上げるには便利な食べ物です。
はい、あ~んしてください。
お~!! なんて豪快な食べっぷり。あっという間になくなっちゃう。
あ、お味噌汁もありますよ。こっちは私が一口頂いてから…。
あらら、ズズズーッて、ちょっと品が無いですね。でも、男性のこういう食べっぷりは、嫌いじゃありません。
はいはい、次のオニギリですね。どうぞ、もっとお食べください。
足りなければ追加で握ってきます。
あ、用意した三個で大丈夫ですか? そうですか……。
全部平らげてしまったスサノオ様、
「う~むっ!満足、満足!! よし、次は風呂だ!」
ええ~!!食べてすぐですか? もう沸いたかな?
咲夜ちゃんに確認すると、大丈夫とのこと。
では、お風呂へご案内いたしますです、はい。
脱衣所……。
せ、狭いな。スサノオ様、体格良いから…。
でも大丈夫。神様ですからね。毎度の様に、ポンっと、すっぽんぽん!
ひいっ、ちょ、ちょっと、前を隠してくださいよ!!
し、しっかり見てしまった。男性の股間のモノ……。
スクさんのを見たことあったけど、あれは小っちゃ過ぎてよく分かんなかった。
こんな風になってるんだ。けっこうグロイ…。
な、何を笑ってるんですか、スサノオ様!
だから、前を隠してくださいってば!
変態露出狂ですか!
顔を真っ赤にして目を背けている私に向かい、大方の予想通りのことをノタマイます。
「ハルカ、お前も一緒に湯に入れ!」
だからですね…。スクさんといい、なんで、男の神様はこうなんですかね。
いくら神様の命令でも、こればっかりは、そうはゆきません。
だいたい、うちの風呂桶は小さいのです。大柄なスサノオ様が入れば、私が入る余地などございません。
それを指摘すると、スサノオ様も納得してくれました。
私は濡れても大丈夫なように靴下だけ脱ぎ、顔を背けながら全裸のスサノオ様の手をとって湯舟へ誘います。
いや、しっかし、すんごい筋肉だな…。
お湯がザバーッと豪快にあふれ出ます。いやだ、ズボンの裾が濡れちゃったよ……。
「お~う、良きかな、良きかな。最高だ!
うむ、うむ。食事といい、風呂といい、そのもてなしといい、素晴らしい。
よしっ、決めたぞ!」
へ? 決めたって、何を?
何とな~く嫌な予感がして、聞かなかったことにしておきました……。
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