恋のキューピッド?
「あ、咲夜!」
と星野が呟きました。
視線の方を見ると、葬斎場の施設から叔母様と一緒に出てきた咲夜ちゃん。叔母様はこれで帰るみたいです。
叔母様を見送った咲夜ちゃんに、二人で駆け寄ります。
「勇樹君。今日は来てくれて有難う。まだ居てくれたんだ。
うん? あれ、顔、赤くない? あれ?ハルカちゃんも!」
「へえっ。な、何でもないよ!
ちょっとした、昔の誤解が解決しまして、互いに情けないやら恥ずかしいやらで…。ね、星野君!」
「お、おう。そ、そういうことだ、咲夜。
それより、お前、これからどうするんだ? 家もなくなってしまって…。
もし、なんだったら、俺…あ……」
こらこら、勇樹さんよ。
そこは、止めなくてもズバッと言っちゃって良いんじゃあないですかあ?
「俺のところへ来い」って!
でもね、考えちゃいますよね。私に引っ叩かれた時のことを。
ゴメンナサイね。私がみんな悪いんです。
まあね。慌てなくても、咲夜ちゃんの気持ちを確かめてから、私が仲を取り持ってあげますわ。
とは考えつつも、性格ひねくれもんの私は、ちょっと意地悪したくなる…。
「大丈夫よ~。咲夜ちゃんは~、暫く私のところで預かりま~す。残念でした~」
と、ニヤニヤ顔の私…。
「え? なに? ハルカちゃん、残念って…」
咲夜ちゃんは不審顔。
「へへへ~、何でしょうかね」
と視線を星野に流す。
「こら、多喜! お前、変なこと言うなよ!」
「大丈夫、大丈夫! 悪いようにはしないから!」
「おい!」
てなことで、星野は置き去りにして施設内に戻りました。
その後は厳かに集骨をし、斎場を後にしたのでした。
弟子たちは斎場から直接帰り、咲夜ちゃんと二人で私の家へ戻りました。
その晩は、私の部屋で二人一緒に寝ました。
いつも同室のビンちゃんは、気を利かせて消えています。
だって、咲夜ちゃんにはビンちゃんが見えますからね。
布団に入りながら、咲夜ちゃんに聞いたのは星野の話。
あいつの家は農家で、現在は跡を継いでバリバリのファーマーズ。だからあんなに焼けていて、たくましいんだ…。
で、咲夜ちゃんちは蕎麦屋。「原材料は国産、出来れば地元産を使いたい」って相談したら、任せろって蕎麦と小麦の栽培を始めたんだって。
彼から原料を調達して、蕎麦を打つ予定だった。だけど、こんなことに…。このままでは彼にも迷惑をかけてしまうと咲夜ちゃん、しょげています。
大丈夫だよ。蕎麦屋、再建しようよ。私も手伝いますよ!
「そういえば、ハルカちゃん。誤解が解けたって言ってたけど、彼とどんな誤解があったの?
なんか、昔すっごく彼を嫌っていたけど」
え、え~と…。告白を誤解してたなんて、咲夜ちゃんに言っちゃまずいよね。
う~ん、どうしよう…。
「そ、それはね、あいつが昔、私に向かって『多くの喜びは遥か彼方』だなんて言ったのよ。酷いでしょう?
で、私は怒って引っ叩いちゃったの。
でもね、実はそのあとに続きがあってね。女は結婚すれば苗字が変わるから気にしなくて良いって言おうとしていたんだって。
そんな、どうでも良いこと言う方も言う方だけど、最後まで聞かずに手を出してしまった私も最悪! で、お互い謝り合っていたの!」
「ふ~ん。そんなことがあったんだ。それで、ハルカちゃんは彼を嫌ってたんだね。
よかった。スッキリしたよ。良い人なのに、ハルカちゃんは何であんなに嫌っていたんだろうって、気になっていたのよ」
「えっ、ナニナニ? 良い人? 聞き捨てならないぞ!
これは、星野に恋してるな!」
「ふへっ! そ、そんな! そんな…こと……。
ないことも…ない…かも……」
なんだよ。やっぱり両想いじゃない。顔赤くしちゃって…。
「告っちゃえ、告っちゃえ! きっと上手くいくよ。応援するよ!」
「嫌だ~! それで断られたら、二度と顔合わせられない!」
「え~、きっと上手くいくよ~。なんなら、私が言ってあげよっか?」
「や、やめてよ! 絶対ダメだからね!」
あらら、布団かぶっちゃった。
でもまあ、こうなれば、恋のキューピッド、務めさせていただきますよっ!
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