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父さんの梅干し

 次の日曜日…。

日曜日は弟子の来る日。今日も二人揃って元気な顔を見せました。

 すっかり我が家の一員となり、庭先で寝そべっていた送り犬二匹。レイラをチラッと一瞥しますが、特に威嚇したりもしません。

今の状況のキッカケを作ってくれた人物だと、悪くも思っていない様子。聞き分けの良い子達で助かります。


 あ、因みに、送り犬たちに名前を付けました。

 長野で犬といえば有名なのは、駒ケ根市の霊犬『早太郎(はやたろう)様』。

怪物を退治したとして、今も神様の様に崇められているお犬様です。

 で、その御尊名を拝借しまして、雄の方は早の音読みでソウ。

同じく、早くという意味の古語「()く」から、メスはトクという名にしました。

…早太郎の別名は「しっぺい太郎」。これは、「疾風太郎」がなまったものとも言いますからね。(諸説あり)

 二匹とも、名前を気に入ってくれているみたいです。

今ではすっかり、我が家の忠実な番犬となってます。

 尤も、私以外のヒトには見えませんけどね~。



 で、弟子の方ですが。今日は二人だけではありませんでした。

助けてもらったお礼にと言って、レイラが職人集団を引き連れて来ています。

レイラのところの関係の造園会社の人たちです。

我が家の隣の草叢を、畑に戻してくれると…。


 八年ホッタラカシで、草どころか小さな木まで生えているところ。とても私たちの手には負えないと話していた場所です。

 ですが、プロ集団にかかれば、あっと言う間。

草刈りの機械で綺麗に除草。そして大型車で運んできたトラクターで、全て耕してくれました。

 数日おいてから石灰を播いて、あと何回か耕せば、良い畑に戻るとのこと。

そこまで全部してくれるんだそうです。

 あ、石垣際の芹だけは残してもらいましたよ。勿体無いですからね。


 その上さらにです。

畑の奥には、梅林というほどでもないですが梅の木が十数本植わっています。

これも我が家の所有なんですが、畑同様、当然の如く放置状態。

その下草刈りまでしてもらって、綺麗スッキリとなりました。

もう少しすれば、よい梅がたくさんなるとのこと。


 梅か…。梅酒でも漬けようかな…。

でも、これだけあると、凄くたくさん生るよね。


 そんな所へ通りかかったのが、一人の御老人。

スーパータカイの小父さん(御隠居さん)です。


「お~、凄いね。畑と梅の木、綺麗にしたんだ。

あんたんとこの梅干しは最高だったからね。また食べたいね」


「え?梅干し?」


「あれ?知らない? あんたのお父さんに、毎年漬けてもらっていたんだよ。

ウチの大人気商品だったんだがね」


 え…。知らない……。


 あ、いや、そう言えば、小さい頃に、梅干しが干してあるのは見たことがあるような…。

言われるまで、気にもしていなかったけど…。


 確かに、最近買う梅干しって美味しくないなと思っていました。

前はもっと美味しかったと思っていたんですが…。

 あの美味しい梅干しって、父さんが漬けた物だったんだ。


 そうか、掃除した時に炊事場に大量にあった樽。

あれ、梅干しを漬けていた樽だ。


「ねえ、小父さん! お父さんの梅干しって、もう残って無いの?」


 お父さんの美味しい梅干し、食べたい!

梅干しは保存食。古い梅干しが高値で売られているってのも聞いたことあります。

掃除をしたとき、家の炊事場には、梅干しは無かった。

でも、こだわりの店タカイなら…。


 残念ながら、小父さんからの回答は…。


「いや~、人気商品だったから、毎年あっと言う間に売れちゃってね。もう無いよね…。

再現できるものなら、再現したくてね。儂も色々試したけど、再現できないんだよね」


 そうなんだ……。

梅干漬けるのって難しいのかな……。


 小父さんは続けます。


「材料の塩は、ウチで用意してたから、同じものが手に入るよ。

梅は、ここの梅だよね。

後はシソくらいで、余計な物は使っていないはずだけどね…。

どうやって漬けてたんだろうね…」


 お父さんの味か…。

梅は有る…。でも、タカイの小父さんに無理なんだもん、全くの素人の私になんか、無理ね…。


 その後、小父さんから、大まかな梅干しの作り方は聞きました。

梅を塩で漬け、塩もみしたシソを加え、夏の土用の頃に干すのだそうです。

塩は天日塩。お父さんは『赤穂の塩』を使っていたそうです。



 部屋へ戻り、今は二人の弟子との三人だけ。

あ、いや、ビンちゃんもいますが、二人にはビンちゃんは見えていないですしね。


 レイラが、スマホで梅干し漬けについて詳しく調べてくれました。

最近の梅干しは減塩って言うことで、塩10%くらいで漬けるみたい…。

でも塩は防腐剤の役目も有り、少ないと腐敗してしまいます。

昔の梅干しは20%くらいで漬けたことも有った。…が、おそらく、それでは塩辛いとのこと。この間で、どのくらいにするかってことが難しいみたいって…。


 そんなこと調べて、どうするのよって言ったら、レイラってば目を剥いて、速攻の返し。


「え? 師匠、漬けないんですか?!

ここは当然、お父様の味再現に挑戦って流れじゃないですか!」


「え、ええ~。難しそうよ。無理よ…」


「はああ? 何でですか。やってみましょうよ。手伝いますよ!

折角、梅があるんですから!」


 あらあら、祐奈まで…。


「そうですよ。絶対やるべきですよ!」


 レイラもそんなに…。


 ま、まあ、ちょっとだけなら…。

 試してみても良いかな……。



 グイグイと迫ってくる二人の勢いに押され、梅干し造りに挑戦することになってしまいました。

 まあ、私も興味ないってことではありません。

おそらく、「やっぱり無理だった」って結論になるんでしょうけど、買う必要があるのは塩とシソくらい。そんな大きな出費でもありません。

父さんがしていたのと同じことをしてみるってもの、悪くはないかも…。

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