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大掃除二日目2

 準備は完了。では、夕食です!

 会場は、炊事場やお風呂がある母屋の、炊事場から上がった場所、居間です。


 あ……。

ただ、一つ、大きな問題が…。


 ビンちゃんなんですよ。

ビンちゃんのお食事を二人に見せるわけにはゆかない。

 どうしよう……。


 う~ん。コソコソすると不審がられるよね。

ならば、堂々と隠すかな。


 母屋の土間の棚から古いお膳を一式出します。

昔の法事に使っていた物で、たくさんある内の一つです。

 黒漆塗りで、飯椀・汁椀・お平・お壺でワンセット。

この呼び名は父に教えてもらっていました。

 並べ方も覚えています。飯椀は手前左。汁椀がその隣。お平は飯椀の向こう。お壺がその隣!

 ご飯を飯椀によそい、汁椀に鍋の野菜部分と汁を。

お平に鍋の魚を。お壺に芹の煮物を。

あとは、お銚子(あ、正確には徳利なんですけどね。細かいことは気にしない!)にお酒を入れて、お猪口を一つ。

箸も一膳。


「師匠。それ、どうするんですか?」


 怪訝な顔の二人……。


「これは、神様の分ですよ」


「「神様?」」


「そうよ。私はこれから、神様にお食事を差し上げてきますので、二人は先に食べていて良いわよ」


「し、師匠! もしかして、それが、ヒスイを見つけられた秘密ですか?

ぜひ、ご一緒させてもらえませんか?」


 う~ん、思った通りの展開。

祐奈は絶対見たがると思っていた。

 だけれども、そうは参りません。


「えーい、控えよ、無礼者!

未熟物の分際で、おこがましい!

もっと精進して、私が認めるまでにならないと、この極秘の儀式は見せられません」


「は、はい! 申し訳ありません!」


 慌てて土下座する祐奈に、目を白黒させて追随するレイラ…。


 ごめんね、二人とも。

見せれば、二人は目を回してしまうでしょう…。

だって、ここにあるものはみ~んな、空中に消えて行ってしまうことになりますからね。

 まあ、その内、そういう時がもし来れば…、話してあげます。

ん? はて、そういう時って、どういう時かな…?

 ……。

まあ、いいや。


 再度一睨みしつつ「覗いちゃダメよ」と念押しして、隣の座敷で、ビンちゃんのお食事です。

 「今日も有難うございました」とお礼を述べ、失礼ながら、まず私が先に一口。

その後はア~ンしているビンちゃんのお口へ。

 先に食べてよいと言っておきましたが、隣室にいる二人は待っているつもりのようですね。

だからといって、ビンちゃんを急かせる訳にはゆきません。

何だかビンちゃんの方が気を使って、いつもよりハイペース。

ビンちゃん、だんだん人間っぽくなってきてませんか? 慌てなくて良いんですよ。

はい、お酒もありますからね。まず私が一口失礼してと…。



 ビンちゃんの食事を終え、隣へ戻ります。

ビンちゃんも一緒に付いて来ますが、もちろん二人にはビンちゃんは見えません。

 そして、私の手には、空になったお膳。


「え、え~と、師匠……。そういえば、昨日の昼も、昼食の時に何処か行かれていましたよね。もしかして、あの時も?」


 恐る恐る訊ねて来る祐奈…。

これに関しては隠す必要もないことですから、教えて進ぜましょう。

というか、言っておいた方が、後々都合良い。


「そうよ。一日三回ね。

あ、おやつなんか頂くことがあれば、そういった時もかな」


「は、はあ……」


 レイラが私の持っている膳を覗き込んでいます。

空になっているのを確認し、首を傾げています。

 私がすることを覗いちゃあダメと言っておきましたが、聞いちゃあダメとは言っていません。

襖を隔てた隣の部屋のこと、きっと、耳を澄ませて私とビンちゃんの会話を聞いていたでしょう。

 但し、二人にはビンちゃんの声は聞こえない…。

つまり、私の独り言の様なモノ。

 ・・・。


 非常に微妙な空気になってしまいましたが、これは仕方ないのです。

私に弟子入りするということは、これは受け入れてもらわなければならないのですよ。


 その後は、特段のことはありません。

お酒も入って、美味しいお鍋。無事、和やかな雰囲気に戻りました。

 そして、お待ちかねのお風呂さんで~す。

 湯加減を確認すると、ちょうど良い感じ。

五右衛門風呂って直火ですから加減が難しいのですよね。

祐奈、上手く焚いたな…。


 まず師匠からと言われ、お先に失礼。

狭いので、一緒に入るなんてことは二人も言いません。

 これはチャンスでありますよ。

ビンちゃんも一緒できます。


 狭い脱衣所で服を脱ぎ、裸に。

ビンちゃんはと言うと、毎度です。一瞬でポンとスッポンポン。

 で、これまた広くない浴室へ移動。

体を洗い、風呂桶のお湯に浮いている木の板へ乗ります。

この板を踏んで、沈めながら入るのです。

 底の鉄板(あ、いや、銅製かな?)を直接踏めば火傷してしまいます。

それを知らずに浮いている木の板を取って入り、大騒動なんて話が有ったような…。

何の話でしたっけ? 『東海道中膝栗毛』でしたっけ?


「師匠! 湯加減どうですか~」


 外の焚口の方から、祐奈の声。


「丁度良いわよ~。ありがとう」


 私の膝に坐っているビンちゃんも、蕩けそうな表情。

 いや~、自宅でこんな良いお湯に浸かることが出来るなんて、思ってもみなかったな…。

これから、時々使うことにしましょう。


 私とビンちゃんの後には、弟子二人が入りました。

 狭いのに、二人一緒にお湯に浸かったみたい。

大人二人だと、かなり窮屈だと思うけどなあ。

おまけにこの二人、前にそれぞれ二つずつ大きなモノくっ付けてるから……。

 でも、まあ、楽しそうに、騒いでいましたよ。

 満足してもらえたなら、幸いです。


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