インド人の文体練習
①カップ焼きそばの作り方
・リグ・ヴェーダ(梵語文献中 12c BCE 頃と最も古い宗教文献で、主に神々への讃歌からなる)
水は沸き立つ。皿には加薬とソースがあった。
加薬とソースは外に出よ。水は中に[入れ]。
また水は外に[出よ]。もし我々が、
ソースと加薬とともにお前を享受せんとするならば。
・梵書(ヴェーダの讃歌や祭詞を解説し、神話を交えて祭儀の手順を述べる 9-6c BCE 頃の文献)
①[祭官は]水を注いでから祭火の上に据える。水は若い女なのだ。火は若い男である。祭火は屋敷なのだ。こうすることによって他ならぬ屋敷において交接が行われることになる。
②さて、待つ。妨げるべきではない。交わりが行われている間を動き回らないようにと[言う]から。
③加薬とソースを皿から掴み取る。皿は祭式なのだ。加薬は歌詠である。ソースは祭詞である。祭式において歌詠と祭詞を掴み取ることになる。
④水を皿にそそぎ入れる。水はヴァジュラなのだ。というのも水はヴァジュラだから。ヴァジュラを祭式にもたらすことになる。
⑥管を通って水を流す。管ゆえに破滅なく安立する。このとき安立していなければ、ヴァジュラが祭主を打ち砕くおそれがある。
⑦皿にソースを入れる。ソースは祭詞なのだ。この(祭式の)とき、祭詞がないと、アスラとラクシャスたちが追い回す。彼らを祭詞によって打ちはらう。祭式は安全で破滅のないものとなった。ソースによって皿は安全で破滅のないものとなることになる。
⑧ソースを均等な者として整える。祭詞を均等な者として整えることになる。
⑨さて皿に加薬を入れる。加薬は歌詠なのだ。歌詠なしに祭式はないと人々は言う。それゆえ皿に加薬を入れる。
⑩このとき祭主は食べてよい。祭式は完成したと(マントラを唱えて)。ある人々は食べても食べたことにならないものを[食べるべきである]と言う。しかし彼(祭主)は食べることができる。
・叙事詩(4c BCE から 4c CE 頃にかけて成立した二大叙事詩『マハーバーラタ』『ラーマーヤナ』が有名)
アルジュナは言った。
あなたの言葉を聞いて、フリシーケーシャよ、私の迷いは消えゆくようだ。
それでは私は聞きたいと願う。カップ焼きそばはどのように作られるか。
聖バガヴァットは言った。
それは実に簡単だ、ダナンジャヤよ。人はまず水を煮るのだ。
そして加薬とソースを取り出すことを忘れてはならない。
煮られた水は速やかに皿へと入るだろう。しばしの間とどまって、
速やかに流れ出る。執着を断て。立ち上がれ、アルジュナ。
一方取り出した加薬とソースは再び皿へと帰る。
このことは私によって前もって企図されているのだ。
この回帰と撹拌の中で、彼(個我)は失われることがない。この真実を知り、
私に帰依する人々は解脱に至るだろう。疑いはない。
・説話詩(ここでは中世の文献たちを参考にした)
以上の物語を語って、王の肩にいる屍鬼は言った。「では王様、私の疑問に答えなさい。カップ焼きそばが作られるとき、何がなされるべきなのか。答えないなら、君の頭は砕けてしまうよ」
勇敢なトリヴィクラマセーナ王は臆することなく答えた。「まず、水を煮なければならない。そして加薬とソースとを取り出す。その後で水を入れるのだ、おお屍鬼よ。
それから水を捨て、ソースを入れて撹拌し、加薬を乗せるのだ」それを聞いて屍鬼は「なぜ入れてから水を捨てるのか。あのムリガーンカヴァティーのように、捨てなくてもいいだろう」と言った。
王は笑って言った。「一度注いだ水を捨てずに、彼女は味(rasa)のない焼きそばを作った。あたかも一度得た思い込みを捨てずに情趣(rasa)のない詩を作るように」
それを聞くや否や屍鬼はヨーガの力により勇士の背中を離れて元の樹の下に戻った。王はまたも屍鬼を取り戻しに行った。実に、英傑の固い意思は動かすことができないのだ。
・美文詩(煩雑なまでの修辞技法に凝った詩である。古代末期から中世にかけてのものを参考にした)
煮られた水が、加薬とソースを奪われた皿に注がれると、加薬とソースを取り戻した皿は、
撹拌により整えられ、舌にとって喜ばしいカップ焼きそばとなる。
②鹿野淳 (2004) ブログ「福岡→岡山→くるり」より
高菜、食べてしまったんですか!!!!???? 冒頭
・原文
店の中は何も無く、テーブルの上は博多ラーメンご用達の「高菜の唐辛子漬け」だけが置いてあった。適度に脂がまぶしてあり、そのオイリーな光沢が胃をくすぐった。ので、高菜を2つばかし口に入れた。
とても美味しかった。その辛さを含め、胃に刺激を与えることを含め、最高の前菜になったと感じた。直後にラーメンが届いた。(以下略)
・リグ・ヴェーダ
店の中には無もなく、有もなかった。
高菜は机上に唐辛子とともに立て。
博多のラーメンのために唯一物として立て。
適度な脂とオイリーな光沢は胃を刺激した。
高菜は口に入るべし。汝ら両者は美味なるべし。
高菜は辛さを持つ者である。高菜は胃の鼓舞者である。
高菜は最高の前菜である。付き従ってラーメンは来た。
・梵書
さて、そこ[店内]には何もなかったのだ。[祭官は]テーブルの上に唐辛子を伴う高菜を置く。というのも高菜は唐辛子を伴うから。博多ラーメンのためにお前を置く、と(マントラを唱えて)。脂を適度にまぶす。脂の脂じみた光沢は胃を鼓舞する者である。そのとき[祭官は]高菜を一対掴み、口に投じる。高菜は美味なのだ。辛さのゆえに、胃を刺激するゆえに、最も前菜である。そのときラーメンが届くことになる。
・叙事詩
空の店において、バラタ族の最勝者よ、テーブルの上には、
唐辛子に漬けられた高菜のみが博多ラーメンのために立っていた。
クル族の裔よ、それは適度にまぶされた脂を持ち、その脂じみた光沢により
胃はくすぐられた。そこで私が高菜たちを食べたとき、クンティーの子よ、
それは辛さにより、また胃への刺激により、前菜のうちの最上の者だったが、
すぐにラーメンが届いたのだ、パーンドゥの息子よ。
・説話詩
その店の中には何もなかった、上に博多ラーメンのため立てられた高菜の唐辛子漬けを除き。
その高菜は脂が適度にまぶされた者であり、オイリーな光沢により私の胃はくすぐられた。
そのため私によりいくらかの高菜が口に入れられたが、それはとても良い味を持っていた。
辛い者、胃に与えられる刺激とを持つ者、ラーメンが従う者として、最高の前菜のようだった。
・美文詩
辛さと胃への刺激を与える者であることによって最高の前菜である、空の店のテーブルに唯一置かれた博多ラーメン御用達の適度な脂と胃をくすぐるオイリーな輝きを持つ唐辛子高菜の、美味なる対が口に投じられたとき、ラーメンが届いた。
②谷川流(2003)『涼宮ハルヒの憂鬱』角川スニーカー文庫(角川書店)より
・原文
ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。
・リグ・ヴェーダ
人々は[詩人を]鼓舞しない、こ[の全大地]において。
彼らは来い、天球に属する者、
未来を知る者、人々の世間の外を知る者、
人に属さないものを知る者は、私のもとに。
・梵書
[祭官は]立ち上がる。「人々は鼓舞しない(……)」と(マントラを唱えて)。
神サヴィトリなのだ、鼓舞するのは。「彼らは来い(……)」と(マントラを唱える)。天球に属するのはインドラなのだ。未来を知るのはアグニである。人々の世間の外を知るのはヴィシュヌである。人に属さないものを知るのはアシュヴィン双神である。神々をあの者(祭主)のため彼(祭官)のもとに呼ぶことになる。
・叙事詩
彼女は言った。
私には死すべき者に愛着がない、ラグの裔よ。宇宙人、未来人、
異世界人、超能力者が、もしここにあれば、彼は私へ近寄るように。
・説話詩
「私は死すべき者を愛さない。父上、私は宇宙人、未来人、
異世界人、超能力者を夫として望みます。他には誰も(望みません)」
王女にそのように言われて、王はまさしく彼女こそ誰か天界の人が
呪いにより人間たちの世界に降りたものなのだと考えた。
・美文詩
ただの人間への興味を持つ者ではない私のもとへ、宇宙人、未来人、異世界人、超能力者たちは来い、冷たい光を持つ月に、鹿、兎、夜、月蓮華が寄せられるように。
④はぐれメタルのコピペ
・原文
はぐれメタルの経験値がなんで高いのかって?
そりゃ、勇者達になかなか倒されないから長いこと生きてるわけよ
スライムなんか最初の町出てすぐいるじゃん?
全然長生きできないわけ。だから経験値も少ないわけ
でもはぐれメタルは逃げたりして長生きしてんの
一生懸命生きて、生活してんの
働いたり、恋愛したり、結婚したり、そりゃ一生懸命
結婚したら子供は何匹つくるか悩んだりして(以下略)
・リグ・ヴェーダ
はぐれメタルはなにゆえ経験値をもたらすか。
いかにして勇者を逃れ、いかにして長く生きるか。
そもそもスライムは原初において出現した。
[スライムは]長く生きることがない。経験値をもたらさない。
いかにして逃れるか。いかにして長く生きるか。
彼ら(はぐれメタル)は力ある気息によって夜を越す。行為が生じた。
意欲が生じた。求婚が生じた。力ある者にこれらは生じた。
彼らに子はあるか。彼らに子はいかほどあるか。
・梵書
[祭官は]はぐれメタルを打つ。はぐれメタルに属する経験値は大きいのだ。かつて原初において、勇気を持つ者インドラはスライムを殺した。このことによりスライムは長く生きない。スライムに属する経験値は少ない。一方はぐれメタルは動き回る者である。動き回りつつ、長く生きる。力により生きる。彼らは夜を過ごす。彼らは力により行為をなす、意欲により妻において子はいかほど生じるか、と[考えて]。……(中略)……はぐれメタルに属する大いなる経験値を[祭主は]得ることになる。
・叙事詩
ユディシュティラは言った。
聖仙よ、はぐれメタルはなぜ高い経験値を持つ者であるか。
一方でスライムたちはなぜ低い経験値を持つ者であるか。
ブリハダシュヴァは言った。
はぐれメタルの経験値について私は語ろう、バラタ族の牡牛よ。
昔、勇士たちは戦いにおいてはぐれメタルを殺すことができなかった。
一方スライムは他ならぬ第一の町の外にいたのだ、クンティーの息子よ。
これゆえ、はぐれメタルたちが長命となる一方、スライムたちは短命となった。
短命のスライムたちは少ない経験値を持つ者である。はぐれメタルたちは一方、
逃げてから、長い命を享受する。そして力強く暮らすのだ、バラタの裔よ。
行為により、愛により、結婚により、サンスカーラを経つつ、
彼らは、どれだけの子があるべきか、と考える、クル族の者よ。
・説話詩
王は言った。
私はお前にはぐれメタルの物語を語ろう。聞きなさい。
バーラーナシーという、街のうちの最高のものがある。
長命のはぐれメタルが、勇士たちを避けるとき、
実にスライムたちはその第一の街の近くにいた。
彼らスライムたちは短命であり、少ない経験値を持つものである。
しかしはぐれメタルたちは、動き回りつつ、長い生を享受していた。
懸命に生きつつ暮らしていた、懸命な仕事と愛と結婚により、
また彼らは考えつつ。自身の子がどれほどの数となろうかと。
・美文詩
高い経験値を持つはぐれメタルに敬礼を、彼らは勇士たちを避けつつ長く生きて、
少ない経験値を持つ第一の町に近い短命なるスライムたちに、彼らは優る。
はぐれメタルたちは逃げるが、そのことによって長命なる者として生きつつ、
働き恋し結婚し、彼らは思案する、未だ見ぬ自身の子らを数えつつ。
⑤お前の家屋根ついとるな
・原文
お前の住所IPから特定したわ^^;
俺もさすがに大人気ないとは思ったけど…^^;
お前の家^^ 屋根ついとるな^^
なんでわかったかって?
い ま お 前 の 家 の 前
証拠ならいくらでもあるけど簡単な目印なら屋根が付いとるよなお前の家^^
ネットなめんなやガキ^^
・リグ・ヴェーダ
お前の住処を知るに至る、自らの成熟を顧みつつ。
お前の家には屋根がある。なぜ私はこれを知るか。
お前の家の前に私はいる。無数の証拠の中で、
お前の家には屋根があり、目印をなした。
・梵書
[祭官は]家の前に立つ。彼は家を特定するのだ。「さすがに大人気ない」と(マントラを唱えて)。家は屋根を持つものである。このことを彼は家の前に立つとき知る。無数の証拠がある中で、屋根は最も明らかな最も理解しやすい目印である。「ネットなめんなやガキ」と(マントラを唱える)。彼(祭主)の屋敷を神々に示すことになる。
・叙事詩
おお、お前の家は IP から特定された。思うに、これは私によりなされるべきことではない。
お前の家には屋根があるのだ、勇士よ。これは何から知られたか。
というのも私はお前の家の前にいる。私には無数の証拠が見られるが、王よ、それらの中で、
最も簡単な目印が、お前の家の屋根を持つことである。若人よ、ネットを軽んじるな。
・説話詩
私はお前の家を IP から特定した、考えつつ。私にふさわしいことではないと。
お前の家が屋根を持つことが、前に立つことにより知られる。
お前の家の前に立つ私にとって証拠は無数であり、その中で最も簡単なものが、
屋根を持つことである。というのも若人よ、ネットは軽んじられるべきではないのだ。
・美文詩
自らを大人気ないと思いつつ、お前の屋根持つ家を私は特定する、家の前に立つことで、
無数の証拠のうちで簡単な目印である屋根を持つことを知りつつ。実に、ネットは軽んじられるべきものではない。