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1ー8、丸め込まれた
「塚本くんの夢はとてもいいと思うんだけど、でも夢も時代に合わせていかないといけないと思うの。角でぶつかるっていうのは、やっぱり危険じゃない? 一昔前ならこれも許容されたと思うけど、今の時代はフィクションに対しても風当たりはきつい。カーブミラーが無いところで人がぶつかったとなると、何かと問題になりかねない。だから、カーブミラーがあるところ、かつ不可抗力としてぶつかったっていう方がいいと思うの。夢も時代に合わせてアップデートしないとね」
「そうか。ーーうん? フィクション?」
「計画的にぶつかってる時点でフィクションかなって。何にしても怪我だけは避けないといけないと思うの」
ーーそれも一理ある。
万一にも怪我したら、ドッキドキの青春どころではなくなってしまう。それにせっかく協力してくれた真奈を危険な目に合わせるわけにはいかない。そう考えると、カーブミラーはあったほうが良いに越したことはない、太郎は思った。
「わかった。じゃあカーブミラーがある角でいい」
かくしてアップデートという名の妥協は拡大していくのであった。