7/11
1ー7、既成事実
「角うんぬんよりも大きな問題を見つけたんだ。もう気づいていると思うけど、私も塚本くんも転校生じゃないの」
いい感じの角探しを宿題にした翌日、例によって放課後の廊下で会議をしていると、真奈が残念そうな顔(演技)で言った。
「うん、それは分かってる」
太郎とて馬鹿ではない。
「心のどこかで、この夢を完璧に叶えるのは無理だと思っているんだ。だからどこかで妥協しなければならない。転校生は諦めた。とにかくいい感じの角でぶつかることが一番大切なんだ。ぶつかったという、既成事実で俺は納得できる」
「既成事実……嫌な響きだね。この際、いい感じの角も妥協できないかな?」
太郎は唸った。既に転校生という重要な要素を削っているのだ。これ以上は流石にーー。
「あ、言い方が悪かった」
太郎の様子から雲行きが怪しいと見た真奈は、すぐさま言葉を足した。
「アップデートできないかな?」
真奈は不敵な笑みを浮かべる。太郎は言葉の意味が分からずに、ただ首を傾げるしかなかった。