1ー2、豹変
新しい青春を探しに、太郎は図書室に向かった。
図書室は出会いの宝庫だ。嗜好、性癖を曝け出して小説を選ぶ文学少女とお近づきになり、「コンクリートロードはやめた方がいいぜ」なんて憎まれ口を叩いてみせて、なんだかんだあって、自転車に二人乗りしてウハウハな未来があるかもしれない。誰とも会わなくたって、本を読むだけで次の青春を発見できるかもしれない。図書室はワンダーランドなのだ。
たまにはスリリングな展開もいいかと思い、中学、高校生ならば誰もが通る道、山田悠介の書籍を眺めていると、一人の女子生徒が隣に立った。
「あんた、見込みあるじゃん」
突然そんなことを言われて、太郎はギョッとした。
これは俗に言う、『不審者』ではないか。容姿だけを見たら割と普通の女子高生なのだが、真の『不審者』とは外見で判断できないものだ。とりあえず生徒指導の先生を呼ぶべきだろう。
太郎はその場を去ろうと、女子高生に背を向けた。
「待って、塚本くん」
ーーなぜ、俺の名を。
太郎は振り返った。
よく見たら、その女子高生は同じクラスの大川真奈だった。普段はあまり話さない子だ。大人しめな女子と仲が良くて、いつも聞き手に回って穏やかに笑っている子だ。あまりにもイメージと違いすぎるーー。
「あんた、見込みあるじゃん」
よほどそのセリフが気に入ったのか、今度は本棚に肘を掛けて述べた。