1ー1、イメージは食パン
その日、塚本太郎は16歳になった。憧れていた高校生活は思っていたよりも普通で、何とも不自由であった。入学から数ヶ月経ったが、太郎は思い描いていた数々の青春を一つもクリア出来ていない。
向上心が無い者ならば、現状を受け入れ、それなりの高校生活を謳歌するのだろう。しかし太郎は違う。彼は向上心の化身だった。幼少期には、積み木で遊べば天井に届きそうなほど高く積み上げ(誇張表現)、小学校に上がると、ハリーポッターに出てくる呪文を全て覚え、学校の廊下で友人の武と、マクゴナガル先生VSスネイプ先生を熱演してみせた。彼は完璧を望むのだ。
太郎が高校生活で達成したいことはいくつかあった。その中の一つが、
女『やっばーい、遅刻遅刻〜! きゃ、どこ見て歩いてんのよ!』
男『そっちこそ! パン食べながら登校してるんじゃねーよ! 喉に詰まらせたらどうすんだ!』
男、去る。
女『あ、ちょっと! もー、なんなのあいつー!』
学校にて。
先生『今日からこのクラスに転校生が来る。では、入って』
ざわつく教室。
男、入ってくる。
女『え、あいつー!』
これが私たちの出会いだった。
というものだ。
彼は男なので、配役的には転校してくる側になるのだが、残念ながら転校する予定はない。そのため転校してくる女子を待っているのだが、一向に来ない。それどころか、パンを咥えて登校する人間すらいない。今まで漫画で見てきた世界は何だったのだと、太郎は強い憤りを感じた。
そんなある日、ついに運命の出会いを果たす。