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きみたちはセカイのかけら  作者: 美汐
第五章 静寂の金曜日
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静寂の金曜日2

 勇哉と雄一と透の三人は、市街地に出向き、学生の立ち寄りそうな本屋やショッピングセンターなどを見て回っていた。しかし、そのどこにもさえのいる気配は感じられず、他の人間の気配も当然のようになかった。電気の通っていないショッピングセンターの中は薄暗く、ただでさえ不気味だった。少し考えてみれば、さえが好きこのんでこんなところに来るとも考えられなかったが、どこを捜せばいいのかわからない今は、そうして一縷の可能性にすがるより仕方なかった。


 ショッピングセンター内を出ると、薄い雲の合間から太陽がかすかな光を地上に投げかけていた。そんな頼りない光でも、やはり勇哉たちにとっては心安らぐ光だった。不安感や閉塞感といったものにさいなまれる心を、かすかにその光は癒してくれていた。


「水城さん。どこにもいそうにないな」


 透が疲労感を滲ませた声でそう言った。


「こんな広い街中を、なんの手がかりもなしに捜索するのは、どう考えても無理があるよ」


 確かに透の言うとおり、このままの捜索をずっと続けていくのは難しい。手がかりもなにもないままでは、無駄に時間と体力を消耗していくだけだろう。

 それに、運良くさえを見つけることができたとして、彼女が自分の意志で姿を消したのなら、再び姿を消す可能性は高い。そうなれば結局、また同じことの繰り返しをすることになるだろう。根本的な解決にはならない。

 どうすればいいのかわからず、勇哉は他の二人に問いかけた。


「水城さんをこのまま捜し続けることに意味があると思うか……?」


 勇哉の問いに、雄一と透の二人はそれぞれ違った反応を示した。


「もう捜索は断念したほうがいいと俺は思う。もともと学校で共同生活を始めることになったのだって、たまたまみながそこに居合わせたからであって、強制されたことじゃないはずだ。水城さんが自分であそこから抜けたんだったら、それを止める権利は最初から俺たちにはないんじゃないのか?」


 そう話す透に対して、雄一は少しの間考え込むように腕を組んでいた。そして、静かにこう言った。


「確かにそれはそうだが、このまま彼女をほうっておくわけにもいかないだろう。こんな世界で一人でどうやって生きていくんだ。彼女を一人きりにしてしまったら、……いずれ死んでしまうことにもなりかねない」


 死、という言葉に、勇哉の体は硬直した。心臓に冷たい刃が一瞬触れたような、ぞっとする感覚が体を襲った。


「彼女が自殺してしまうって、そう言いたいのか……?」


 水城さえに限ってそんなことはない。そんなことをするわけがない。そう頭では思うが、なぜかそれを言葉に出して言うことはできなかった。


「そうとは限らないが、そうなってしまう可能性もある。自殺でなくても、食中毒やなにかの事故で、人知れず死んでしまう場合だってあるだろう。そうなることがないよう、単独で行動することはなるべく避けたほうがいい」


「そうだな。やはりほうってはおけない。ただ、宮島の言うように、手がかりもなしに闇雲に捜索を続けても、水城さんの居所は掴めないだろう。なにか、彼女の行きそうな場所の手がかりを調べる必要がある。それには、彼女がなぜいなくなったのか。昨日の彼女の不自然な態度の理由を知る必要があると俺は思う」


 勇哉たち三人は、それを知るためにどうするべきかを話し合い、とりあえず学校へ戻ってみなに相談しようということになった。水城さえのことについてよく知る田坂景子も今は居場所がわからないが、彼女もそのうち学校に戻ってくるに違いない。学校に行けばなにかがわかるという補償はなにもないが、とりあえずはそうするのが勇哉たちに残された最善の策だった。


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