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きみたちはセカイのかけら  作者: 美汐
第二章 衝撃の火曜日
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衝撃の火曜日9

 勇哉の家から少し離れた場所に、大手チェーンのコンビニがある。勇哉自身も、かなりの頻度で利用している便利な店だ。勇哉と雄一、透の三人は、今そこの駐車場内にいた。


「見間違いってことはないよな?」


「いや。絶対見間違いじゃない。絶対さっき、あの中でなにかが動くのが見えた」


 雄一と透の会話を横で聞きながら、勇哉は駐車場の一番端に駐まったままになっている車の陰から、店内に目を凝らしていた。

 勇哉たち三人の調査グループは、この辺りの状況を調査して回っていた。けれど、やはりどこにも人の気配はなく、なんの収穫もないままここにたどり着いていた。

 しかし先程、透がこのコンビニの店内に、なにか動く影が見えたと言ったのだ。それはこの状況下では喜ぶべきことなのだろうが、今まで町の住人に遭遇してこなかったことを考えると、疑ってかかってしまうのも無理はなかった。

 それに、灯りのないコンビニの店内はなにやら薄暗く、不気味にすら思えた。


「とりあえず、行って確かめてみるしかないだろう。誰かがいるなら、それはそれでいいことじゃないか。新しい情報だって手に入るかもしれない」


 勇哉は意を決して車の陰から出た。


「お、おい勇哉! ちょっと待てよ」


「お前らはそこで待っててもいいぜ。とにかく俺は行って確かめてくる」


 勇哉がそう言うと、雄一がやれやれといった様子で勇哉のほうへと近づいてきた。


「お前だけ行かせるのも、なんかかっこ悪いからな。一緒に行ってやる」


「おいおい! なんだよ二人して。だったら俺も行くって!」


 そんなわけで、結局三人一緒にコンビニの店内に足を踏み入れることになった。

 中に入っていくと、そこが散乱した商品で散らかっていることはひと目でわかった。


「……誰か、そこにいますか?」


 勇哉が少し緊張しながらそう声を発した。しばらく待ってみるが、なにも反応が返ってくることはなかった。勇哉は緊張を解き、ふうっとため息をついた。


「おい。透。誰もいないじゃないか。やっぱりお前の勘違いだったんだよ」


「えー。だって、さっきは本当に誰かいたように見えたんだよ」と透は口を尖らせた。


「けど、誰も出てこないじゃないか。やっぱり見間違いなんだって」


「そうなのかなー。おっかしいなー」


 透はなおも首を傾げていた。

 勇哉は店の奥へとさらに歩いていった。棚の商品は多くが下に落ちていて、かなり無惨な惨状を呈している。地震があってから、誰もそれを片付けた様子は見られない。


「けど、ここの商品もこのままだと持っていき放題だな。こういう非常事態には、空き巣や泥棒が多く出るってのもうなずける話かもな」


 勇哉はそう言いながら、ふとあるものに目が止まった。それは、レジカウンターの下辺りに落ちていた。

 封の開けられたスナック菓子の袋。散乱する店の中では、それが落ちていても特に目立つものとは言えない。けれど、勇哉はそれにある違和感を覚えた。


 おかしい。今ここにそれが落ちているのは、勇哉の認識とは一致していなかった。地震の前には店は当然散らかっていなかったはずだ。きっと店員もそこにいただろう。店員のいるレジカウンターの目の前で、それを捨てるなんてことは、常識的に考えてありえない。それにあてはめると、それは地震後にそこに捨てられたと考えるのが自然だ。だとするならば……。


「勇哉!」


 雄一の叫び声と、その影が勇哉の視界に映ったのはほぼ同時だった。


(やばい! )


 本能的にそれを察知した勇哉は、咄嗟に大きくそこから飛び退いた。しかしそれは完全には避けきれなかった。勇哉の右足のくるぶし辺りを、それはかすめていった。

 ガチャーンと店内に騒音が鳴り響いた。なにかが陳列棚にぶつかったのだ。

 勇哉はさっとそちらを振り返った。


 暗い店内に、背の高い影が動いていた。


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