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白黒姉妹  作者: 日曜閑人
Chapter.1
2/11

1-1

戦後のマキナス連合はマキナス連邦と名を変え、旧リバリタスから採掘した大量の奇晶によるエネルギーのおかげで、あらゆるアナリストの予想をはるかに上回る速度で復興を遂げた。首都の中央には、24時間灯りを絶やさない200M程のビルが乱立するようになった。また、機械仕掛けの神が大陸ごとに置かれることにより、都市部の交通事故や渋滞、電車のダイヤ乱れや混雑、そして犯罪が一切なくなった。

そんな人の行きかう街中を一人の少女が走る。彼女は通称ルリと呼ばれている。

というのも、マキナス連邦では、人民の統治を簡便化するため、各個人に割り当てられた番号が個人の正式名称となるのだ。(ルリの場合は1578235104が割り当てられている)しかし、それでは呼びにくいので、家族間や、親しい友人間では通称をつけて呼び合っている。

今日は彼女の妹であるスミレ(番号は1578235105)の誕生日なので、学校が終わると、急いで帰ってサプライズの準備をしようと考えていた。ルリは家族のスケジュールを把握しており、両親は買い物、妹は部活と知ってはいる。しかし一応、家族がいないのを確認した後に、家に入る。そして視界にケーキの作り方を投影させ、制服のままエプロンをつけ、独り言を呟きながら作業を開始する。

「ほんと、この共用ネットワークって便利よね。知りたい情報がどこでも見られるし、言葉に出さずともみんなと喋れるんだもの。神様のおかげよね。」

マキナス連邦では、人民のコントロールのため、出生時に乳児の体内にナノマシンを入れ、個人の位置情報や、健康状態を常に機械仕掛けの神がモニター出来るようにしている。ナノマシンに付随する機能として、人々は共用ネットワークへのアクセスが可能となり、瞬時に様々な情報を入手したり、契約を行う事ができる。また、学校では道徳の時間に機械仕掛けの神への絶対帰依が説かれ、子供たちも、その利便性ゆえ、モニターされることを別になんとも思わなくなる。

そうこうしているうちにルリは生地を作り終え、それを冷蔵庫に入れ、テレビをつける。目を瞑れば、共用ネットワークからいくらでも見たい動画を探せるが、たまにはどうでもいい番組をダラダラ見ようと思ったのだ。案の定、つまらないバラエティー番組がやっており、コメディアンのしょうもない話をルリは上の空で聞いていた。考えるのは勿論妹のスミレのことだ。ルリは妹の笑顔を想像し、思わず口元を綻ばせる。

その時、番組にテロップが入る。この都市において、神がコントロール出来ないのは天災だけであり、かつこの都市は地理的に安定したところに位置していることから、滅多にテロップが入る事はない。ルリは少しばかり好奇心を抱く。「何が起きたんだろう?」と。テロップには「セントラルタワーで爆発発生 原因不明」と書いてあった。

ルリは思わず窓の外を見る。セントラルタワーは首都のビル群の中で最も高く、1000Mある。当然それだけ高ければ、街のどこからでも見える。ルリの家とて例外でない。さて、タワーからは煙が昇っていた。

その時、ビルの先端が巨大な火の玉に包まれ、消し飛ぶ。30秒ほど遅れて轟音が響き、近くの家の窓ガラスが一斉に割れた。

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