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これは我々とは何ら関係のない世界の話。
その世界では、21世紀くらいまで紛争、融和、統合などなど、我々と同じような歴史をたどっていた。
しかし、ある一つの物質が全てを変えることとなる。
それは質量とエネルギーを自在に行き来できる物質、通称"奇晶"ことイマジウムである。
イマジウムはその特質によってE=MC^2に従い、莫大なエネルギーを取り出すことができ、その埋蔵量と相まって当初のエネルギー問題を全て解決すると言われていた。
が、しかし実際に起きたのは産出国による独占と価格の高騰であった。そして、資源に乏しい国々は追い詰められた挙句、産出国に対する侵攻と略奪を実行。それに対する報復が再び報復を生み、大国を巻き込んだ世界大戦は両手の指では数えられなくなり、細かい紛争は1000を超えた。
その結果、紛争が終わる頃には、人類の人口はかつての30%程度まで減少し、各国家は大きく二つの陣営に分かれることとなった。
絶対に公平な統治者として、人工知能に全ての判断を委ねる、旧非産出国の北側連合「マキナス連合」と、従来のように人が人を支配する、旧産出国の南側連合「リバリタス連合」の二つである。
紛争の勝敗はといえば、マキナス連合の統治AIである、通称"機械仕掛けの神"の完璧な戦略シミュレーションによって、北側の圧勝で終わった。
その後、南側は部分的自治を認められつつも、併合地として北側に支配されることとなった。
そして世界に平和がもたらされた。
しかし、戦火が再び燻ぶりつつあったのを人々はまだ知らない。