霊の秘密
「後から逝くからな。」
マツは、1号室と2号室の前で声をかけると0号室へ入っていった。
「お二方も成仏されたことですし、ほかの部屋に移動できませんか?」
司はマツに恐る恐る尋ねた。
「できれば、そうしてやりたいのはやまやまだが、霊というのは不便で、思いの強いところでないと留まっていられないようじゃな。」
霊と同じ部屋で生活するのはいやだ。しかし、少しでも収入を増やすには、これ以上1階をつぶせない。司はしかたなく、2階の東端にある3号室へ移った。海外生活が長いため、シャワーでも別に苦にはならなかった。玄関の両脇に2階へあがる階段が別々についている。3つに区切れば、左右の廊下端の扉を玄関にして1、2階のつながったメゾネットタイプにできるらしい。中央は階段がないため、今の玄関のところに階段を増設しなければならないが。
とりあえず0号室は物置ということで封鎖した。霊のマツは扉を開けなくても自由に出入りできるし。
マツは平日の昼間は、どこかに出かけていた。成仏してもらうには、マツのことを調べるしかない。話したがらないマツの成仏の手がかりを見つけるのだ。ある日、司はマツの後をこっそりとつけた。つけられていることを知ってか知らずか、彼は見通しの良い道をゆっくりと進む。やがて、小高い岡の上にある小さな遊園地についた。切符も買わず、マツはまっすぐ中へ入った。
「お客さん、入場券を買ってください。」
マツの後をそのまま入ろうとした司に係員が叫ぶ。あわてて、受付に戻り入場券を買っているうちにマツを見失った。