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夢の家賃生活ー霊の住む部屋ー  作者: 明日香狂香
6/16

シキキン、レイキン0円

 れい付き物件。そんな、おまけはらない。6部屋へやしかないところに半分はんぶんれい居座いすわられていては、せっかくの家賃収入やちんしゅうにゅう見込みこめないではないか。とにかく成仏じょうぶつしてもらおう。

  「わしは、供養くようさえしてもらえればかまわん。タケちゃんはどうじゃ。」

  一方いっぽうしわだらけの老婆ろうばが、のないくちでもごもごとしゃべる。タケちゃんとばれたもう一人ひとり老婆ろうばくちひらく。

  「チヨちゃんが一緒いっしょなら、わしも未練みれんはない。」

  二人ふたり老婆ろうばは、一緒いっしょにいられれば、このでもあのでもいいらしい。むしろ、わかれたくないおもいが未練みれんとなっていたようだ。

  「マツさんも一緒いっしょにどうじゃ。」

 タケさんが老紳士ろうしんしれいたずねた。

  「わしは、まだけそうにないわい。」

 タケさんはゆっくりとアパートのなか見回みまわした。べつ未練みれんがありそうだ。ここにもどってきたということは、このアパートをてた理由りゆう関係かんけいしているのかもしれないと、つかさかんじた。

  「そうじゃったな。」

 タケさんはすこさびしそうにだった。


 とりあえず、2たいはすぐに成仏じょうぶつしてくれそうだ。つかさは、ちかくにおおきな十字架じゅうじか屋根やねっている建物たてものがあったのをおもした。金髪きんぱつ牧師ぼくしてきた。

  「シンプ、ヨビマス。」

 ブラジルけいなのか、牧師ぼくしはあまり英語えいご得意とくいではないようで、片言かたこと日本語にほんごつかさのこすとおくえた。

  「除霊じょれいということであればうけたまわりますが、あくまで信者しんじゃさんへのサービスですので、まずはご入信にゅうしんいただかないと。毎週日曜まいしゅうにちよう午前中ごぜんちゅう礼拝れいはい参加さんかしていただきます。」

  流暢りゅうちょう日本語にほんごだ。神父しんぷ日本人にほんじんのようだ。留学当初りゅうがくとうしょ日曜にちよう午前中ごぜんちゅうにモールへものにいって、ほとんどのみせじていたことにおどろいたとき記憶きおくがよみがえった。

  「れいたい成仏じょうぶつさせていただきたいのですが。」

  つかさ依頼いらいに、神父しんぷ苦笑にがわらいした。

  「ここは、カソリックの協会きょうかいです。成仏じょうぶつならおてらかれてはいかがですか?」


 アメリカらしのながかったつかさは、れいといえば協会きょうかいだとおもんでいた。坊主ぼうずいはいない。とりあえず、おてらつけてはむ。

  「宗派しゅうはがわからないと、おけかねます。地縛霊じばくれいなら神主かんぬしのほうがよいのでは?」

 どうやら、宗派しゅうはによって、成仏じょうぶつさせるためのおきょうことなるようである。隣町となりまちまであしをのばして、やっと供養くようできるという一件いっけんつけた。

  「うちは、神仏混合しんぶつこんごうですから。どなたでも大丈夫だいじょうぶですよ。」

  眼光がんこうするどいがおだやかそうな作務衣姿さむえすがた住職じゅうしょく言葉ことばに、つかさ安堵あんどした。

  「すぐおねがいできますか?」

  住職じゅうしょくはこころよくけてくれた。お盆過ぼんすぎでひまだったのかもしれない。


  「こちらの二部屋ふたへやですか?」

  むらさき袈裟けさけた住職じゅうしょくは、くろ薄衣うすごろも羽織はおったわか坊主ぼうず一人連ひとりつれてきていた。坊主ぼうず法具ほうぐし、経本きょうほんとメガネを住職じゅうしょくわたした。住職じゅうしょくはメガネをかけると

「うわっ!」

 と、部屋へやおくさけんだ。あわててメガネをはずす。そして、かせると平静へいせいよそおった。

  「たしかに、いらっしゃいますな。」

  こえうわずっている。つかさ心配しんぱいになった。

  住職じゅうしょくべつ経本きょうほんとメガネをした。この住職じゅうしょく間違まちがってけたメガネこそ、祐二ゆうじ見本みほんとしてあずけていた霊視れいしメガネだったことを、つかさらなかった。住職じゅうしょくみずき、坊主ぼうずらすりんにあわせて読経どきょうはじめた。こえき、力強ちからずよさをかんじた。当初とうしょぽんのはずだったおきょうは、3ぼんになった。きょうごとに役割やくわりがあり、れいんだことを自覚じかくさせ、未練みれんり、成仏じょうぶつしてもらうためには必要ひつようらしい。住職じゅうしょくは、くらいたか僧侶そうりょだったようで、二人ふたり老婆ろうば満足まんぞくげにえた。

  「今回こんかい経験けいけんをさせていただきました。おしき御布施おふせ結構けっこうです。わりに仏様ほとけさまにおそなえをしてとむらってあげてください。」

  わか坊主ぼうず住職じゅうしょくわってつかさつたえた。二人ふたりかえったあと避難ひなんしていたしてマツさんがもどってきた。

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