アパート購入
アメリカから帰国した司は本格的に翻訳業を始めるにあたり、生活のための収入源になりそうなものを探していた。
「自宅にいるだけで収入になる仕事はないか。」
ネット関係の仕事は簡単に見つかるが、どれも格安で内職程度のものしかなかった。ゲームソフトの翻訳なども人気だが、ゲーマーではない司はゲーム専門用語には疎かった。
部屋探しのために入った不動産屋に格安のアパートが出ていた。一部屋ではない。6部屋、一棟まるごと出ていたのだ。
「アパートに住みながらの家賃収入。」
アパートまるまる一つとなれば、普通であれば数千万単位であろう。それが500万程度。
「欠陥とかじゃありませんよ。競売物件ですが、購入されるならうちで代行しますよ。」
オーナーが突然死んでしまったため競売にかけられたというのだ。司はアメリカで貯めた貯金をすべて叩いて、そのアパートを購入することにした。アメリカ式の経営ならいけるだろう。あちらでは安い部屋は人気がありすぐに埋まる。入居者自身がリフォームを行うので、初期投資もあまりかからない。司も留学当初こそホームスティしていたが、ホスト家族に気を使うのが苦痛になり、ひとり暮らしの部屋探しに苦労した経験があった。
費用はかさむが建築士にも見てもらった。欠陥も痛みもまったくないということであった。最低価格での応募だったが、無事手に入れることができた。