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朝露に濡れて輝くバラの花  作者: 白石 瞳
もう一度聴かせて・・・
9/15

それぞれの独り言

 ああ、恋よ恋

 麗しの恋よ

 そは青春の垣根に咲ける

 朝露に 濡れて輝く バラの花よ


 *


 私は、貴女が感じている顔を見るのが好きですよ。シーツを片手で掴み不規則な吐息が私の耳にかかる瞬間に体が熱くなることを1人でいる時、よく思い出します。


 外から見えるはずはありませんが構わずスリップで窓の近くに立ち、ためらいがちにゆっくりと私を見て笑いかける美しい横顔。


「ロビンフッドのように視線の矢を私に命中させてみて」

 そんな時は凛とした目つきで挑発するように私に問いかける。私はどこに矢を打てばいいのだろう、貴女の心の奥なのか。


「先にシャワーを使う?」

 絡んだ後に聞く貴女を、またベッドに誘わずにはいられない。

 私は抱き寄せると、バスローブの紐をとき、髪や頬にキスをする。微笑んでいたはずの貴女は、また色のある吐息をもらし始め自分から脱いでいく。


「もっと欲しいの。」

 その言葉に私はどれだけ歓びを感じてるかわかりますか?


 *


 ・・・ボーディ・サットヴァ


「もう一度、愛し合いましょう。中に入るよ。」

「ん? サト・・・ヴァ?」


 彼はいつもよりも深く私の奥に入り、私の鼓動に合わせて動くと終わったというのに痛い位に強く抱きしめて。そして、いつもより体を離すのが遅かった。ワシの髪で隠れてる耳のもとに唇で触れる。


「駄目よ。」

 というのを無視して。


 私は困ってしまってシャンパンを慌てて飲み口の両端からあふれるのが胸にかかると、彼はこぼれないようにかそれを吸い始める。私は驚いてグラスを床に落としてしまい、柔らかい絨毯の上でコロコロと転がった。

 どれだけ抱きしめられていたか覚えていない。そんな彼は初めてだったことだけしか。


 *


 彼のセックスは優しくて素敵だった。


 確かに以前教えてくれたようにジムやトレーニングで鍛えられた筋肉と持続力は私を満足させてくれた。テクニックというより、私を大切に扱うのが嬉しくて心を許すことが出来た。


 私は信頼関係がない人と肌を重ね合わせることが出来ない。そういう意味では、夫に対しての関心なんかは薄れてしまっているから本当なら拒否したいの。義務的に抱かれるなんて、前に友人から聞いた「セックスなんてスポーツと同じ」みたいだわ。

 私、もう夫に抱かれたくなんかない。この人に出会ったことで私の中の何かが変わったわ。少し優しくなれたみたいなの、自分自身に対してもそれから家族や周りに対しても。

 この人に抱かれることで虜にされてしまったというより、好意を持たれていない夫に抱かれる意味なんか無いんじゃないのかしら、例え私から夫への接し方は変わったといってもね。だって、夫は変わってくれないわけだし。


 *


 浮世暮らしは長くはない。彼の趣味の1つは猟銃だった。それは山で暮らしたことを考えて自給自足の生活をするために習得したかったからでもあるみたい。もしも出家が無理ならば、1人で過ごすための、そんなことを笑って話してくれたことがあったわ。


 猟銃の免許は取得して、最初は山のグループの仲間に加わって演習をするらしい。

 なんて言っていたかしら、猟銃を自宅に保管するためには警察が半径何百メートルかの家の人達に調査をするらしい。彼が保管することをyesかnoか聞いて回り、1人でもnoだと言うと保管することは不可能になる。彼は日頃から温厚で近所の人達にも自分から挨拶したり町内の活動もそれなりにしていたらしいから猟銃は可能となった。

 もう何度も、山で演習を行い、猪や動物を狙うのだ。


 そんな彼の姿を想像した。グループという組織は苦手なようだったが、それをしないとノウハウもわかりにくいし危険なことを覚えなくてはならないようだからと。

 どんな顔をして猪に猟を向けるのかしら。真剣な顔をして走り、獲物を追いかけ狙い撃ちをする。私と居る時には見せる顔と違うのだろう。なんだか不思議だわ。



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