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朝露に濡れて輝くバラの花  作者: 白石 瞳
月の女神ディアーナ
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香水

 人は多面的と言ったのは、貴方でしたわね。だけど、貴方は私のことを儚いとか逞しいとかセクシーだとか、好きなように解釈なさって。私ね、とんだジャジャ馬でもあるのよ、意外にね。

 それからね、以前に「2年前までは美しく生きたいと思っていた。」と仰っていたけれど、何があったのかしら? 聞きたいですわね。



 それは私と本気でつき合いたいために確認するのでしょうか? 決心するために聞くのでしょうか?

 私は、独学で禅をやっていました。経典、仏教書などを読み、正法眼蔵に驚嘆し、人生の最後は禅で締めくくろうと決意したのです。

 しかし、在家での悟りは不可能だと断言され、私は、一時的にやめることにしました。出家するには、家族を置いていくことになりますから、1番下の子供が成人するまでは、俗人として暮らすことにしたのです。

 私が「快楽的な生き方」と言ったのは、菩薩としての生き方からみた人の行いです。

 今の私は俗人です。感情もあらわにし、惹かれた貴女を抱くことを望んでます。


 *


 私が知りたいのは、もう少し違うことだわ。仏の道に入るきっかけとなった理由とか、何らかの出来事や思いがあったからでしょうに・・・。


 私は食事の支度をしてると娘が塾から帰宅した。誰ちゃんは髪型を変えたとか、筆箱を新しくした友達がいるとか、勉強には関係のない話ばかり。でも、そんなものよね、私の昔のことを思い出してもそうだわ。

 勉強しなくてはいけないと思いながら本を読んだり、美味しいアイスクリームのお店があるとか、そんなことが日常のエッセンスになっていたわ。


「あら、今日は早いのね。」

 珍しく食事後の20時に夫が帰宅した。

「パパがママにプレゼントするなんて珍しい。えっ、お土産? プレゼント? リボンがついてるから、プレゼントよね。もしかして、結婚記念日?」

 目を大きくさせて娘が言う。

 夫は

「そんなんじゃないよ。夕飯は済ませてあるから。」

 とだけ言って、部屋に向かった。

「何よ、パパったら。プレゼントならニコニコして渡せばいいのにね。」


 そうよ。結婚記念日なんかじゃないわ。

 2年ぶりになるかしらね。娘ったら、無邪気に。

 知ってる? 夫が妻に香水のプレゼントをする理由を。貴女もいつかわかるかもしれないけれど、恋人が出来た時か変えた時よ。嘘が下手な男は、「匂いはバーでの接待だ。」って、無理につき合わされたようにため息しながら言うのよ。妻から顔を背けながらね。

 貴女のパパは、ある意味賢いのよ。恋人の数だけ、私は香水のプレゼントをされたの。彼女と同じものよ。

 仕方ないわね、使ってあげるわよ。


 娘は香水に憧れてる。

「早く、私も欲しいわ。ママ、みんな制汗スプレーとかほんのり香りのついたティッシュを持ってるのよ。私も欲しいな。そういうものじゃなくて、香水がいい。1適つけて。」


 何か言おうとしたら電話が鳴る。息子かしら。

「あっ。ご無沙汰しております。

 そうなんですか? それは、おめでとうございます。」

 義理の母が日本舞踊で師範に合格して、免状を取った連絡だった。名取の免状を取った時には、私も名前の披露に駆り出された。会場の手配やお世話になってる方々、同じ教室の皆に配る扇子の手配。私まで新しい着物を作り・・・。

 いい嫁を演じていた。


 私は・・・体から湧きだしてくるような熱い踊りの方が好きだわ。淑やかだけどしたたかな目線で色気を出す日本舞踊は似合わない。


 *


「ジャジャ馬」? 貴女が、どうジャジャ馬なのかは別として、決して苦手ではありませんよ。

 それから、もう1つ告白します。私は少し、特異な体質です。早いか遅いか、でいうと、遅い方です。

 子供を作る時は、そのために何時間もかけて営み命中しました。

 特異な馬に、貴女は乗りますか?

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