表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝露に濡れて輝くバラの花  作者: 白石 瞳
月の女神ディアーナ
5/15

プチトマトの想い

 ふぅ。少し彼は誤解してるようね。

 それとも私、からかいすぎたかしら。

 もう私のことを諦めてしまったのかと、可笑しなからかい方で彼を刺激したわ。ストレートな方法でなくて嫌なやり方だったわね。



 ねぇ、とにかく私の気持ちは伝えましたし、それに合意し始めてるの。

 貴方は気が向いたら、優しく私を抱きしめてもいいわ。だって、愛を下さるのでしょう? 嫌なことは強要しないようなタイプですわね。それなら、思うがまま欲望を出して下さって構いませんわ。

 どの位、貴方が激しいのかわかりませんから、私は驚くかもしれませんがガラス細工ではないから壊れたりはしませんよ。心配なさらないで。

 ただ、勢いよく抱きしめてストッキングが破れたら弁償して下さいな。犯されるわけではないから、案外私は貴方の両腕をつかみながら首を振ってしまうかもしれないわ。感じてしまってね。

 セックスして、これはNGだと気がついたら、それを伝えあって次に配慮できることを2人で話し合えばいいんじゃありませんか?

 それが信頼関係の1つでもあると私は思います。仮に「愛と快楽の交換」であったとしても、その位は必要でしょう。


 貴女は時に切ないほどに儚く、時に恐れるほどに逞しい。やはり、私は、この肉体で貴女を抱きしめて歓喜の渦の中で狂わせてみたい。

 だが、貴女の魂は壊れないように最高の優しさと思いやりを持って触れることを約束しましょう。


 私ね、昔から男性と会う時のストッキングは決めてあるのよ。イタリア製のもので20デニールのもの、破れにくいけれど一足4000円位しますから。念のため。



 火をかけていたやかんが音をたてて沸いている。仕事先からの電話で、「コンセプトはソフトフォーカス処理をして、仕上げは・・・。」

 私はペンを持ちながら、火をとめた。


 私が儚くて逞しいですって? 彼のイメージする私がそれなの・・・。

 パーティーでの初対面の時にはどんな女性だと思ったのかしら。メールではなくてね。

 私は彼に興味を持っている。男と女の間での「興味」は、惹かれてるということなのよね。私は実はまだ彼に対しての気持ちが確定されていないの、ほら、好きとかそうじゃないとか。確かに伝えたわよ、「好意がなければ抱き合うのは虚しい。」だから、何らかの好意を持ってもらうことが条件だとね。


 夫に対しては、空気のような、既に家族の一員とい思っている。気が向いた時にするセックスも私は妻として役割を果たしてるだけのような気がしてる。役割と言っても、もう子供は作らないわけだけど。

 夫は私のことはどう思ってるのかわからないけれど、女として見ているのかしら。なんとなく欲望を満たす相手が隣にいるだけって思っているんじゃないかしら。

 家事は私がして当たり前、子育ても当たり前。まるで家政婦さんのような一日を送って、時々夫の相手をする。そこに「好意」はあるの? 

 それに、私は知っているのよ。夫は外でしていることを。

 ああ、でも、だから私も仕返しとして外で自由にさせてもらいたいというわけではないのよ。そういうのって、言葉では上手く表すことが出来ないわ。



 私は買い物をする時は、メモをして出かける。

 だけど、動揺してるせいかしら、つい忘れてしまったというか、私ボンヤリしてしまっているわ。美味しそうなトマトを買った後で気がついたの。まだ冷蔵庫にあったんだと。

 玄関のドアを開けて、すぐに確かめたくて。ほら、やっぱり、野菜室の奥に黄色とオレンジ色のプチトマトが隠れていたわ。


 ときめいてるわけでもなく、ドキドキ感を得たいために彼とやり取りしてるわけじゃないわ。やり取りし始めてから、彼のこと考えてしまうようになったのよ。買い物リストを忘れる位にね。

 彼はどうなのかしら、文字だけで、言葉だけでしかわからない私を、何故それほどまでに抱きしめたいと思うのか? もっと知りたい、儚いとか逞しいとか、それだけでなくて・・・ただ、もっと知りたい。

 そうよ、惹かれるのには理由なんてないのよ。そんな気持ちを上手く言葉で表せたとしたら、かえってチープな気がするわ。好意というものも、どうでも良くなった気がするわ。「理由はわからないけれど気になる、惹かれる」、それでいいじゃないの。

 ああ、そして、私も彼のことをもっと知りたいと思っていることに気がついてしまった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ