表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朝露に濡れて輝くバラの花  作者: 白石 瞳
月の女神ディアーナ
1/15

愛は幻想

あれ、もう1度言って下さるかしら・・・。


「貴女がどんな口調で何を語り、どんな表情で笑ってくれるかを知るのが楽しみです。」



何事もなかったことへの物足りなさと安堵感を感じつつ、人々は月曜日には一斉に日常を再開しますね。

人間の欲望を肯定的に捉える快楽主義と、否定的な禁欲主義。

どちらの生き方をとるかは、その人自身の選択で決まるもの。

快楽主義者となって欲望を満たされないストレスを抱えて生きるか、禁欲主義者となって強欲な人間社会に対する憤りと嘆きの中で生きるか。

どちらにしても、穏やかな人生を送ることは難しいのではないでしょうか。

貴女は、これからの人生、どちらをとりますか?



ねぇ、それって、なんだか笑ってしまうわよ。

前に私は言いましたわよ。

愛なんて幻想に過ぎないんじゃないかしら。

「終わりのない愛」なんて、存在なんかしないと思いますわ。

それに貴方、おかしいんじゃありませんの?

ご家庭があるというのにも関わらず、愛だの恋だの語ろうだなんて。



”ああ、恋よ、恋

麗しの恋よ

そは青春の垣根に咲ける

朝露に 

濡れて輝くバラの花よ”


これですよ。



以前、「禁欲主義は美しいと素敵な道徳観を仰った貴方が、今は「愛」ですの?

じゃあ、「終わりのない愛なんて存在しない」をお認めになるんですのね。


・・・・・・・


貴女とsexがしたい。

私の体質から考えると、とても激しいものになるでしょう。

貴女が求める男女の交わりは、理想というものはどんなものでしょうか?



2日間の仕事から解放され、シャワーを浴びた後、私はキリマンを飲んでいた。

このコーヒーが特別好きではなかったけれど、いつもよりお値打ちだったから。

リラックスしていた矢先、また、あの男からのそんなメールが。


ねぇ、貴方のように快楽か禁欲かなんて考えて生きている人は1%いるかどうかでしょうね。

フランスやイタリアのように貴族制度がまだ残っている国でならわかりませんけれど。

ああ、それも昔ならではのことかしらね。

人は日常の暮らしの中で、些細な欲望を求めているんだと思いますわよ、無意識にも意識的にも。

毎日のリズムがあるでしょう。

会社の中でどれだけ自分が上に上がるか、子供を私立に入れることが出来るか、お隣さんと比べて、ほんの小さな差に満足してみたりね。


マノン・レスコーは若い男を捨てて金持ちの男を選びましたわね。

後から嘆いていたみたいですよ。

宝石や大きな部屋に美しい調度品なんかでは物足りない。

愛のある暮らしが欲しいんだってね。

物欲よりも心の温かさを欲しがっていたのね、「愛」が存在するとしたら、ですけれど。


「お貴族様がなんだ、俺達からは税金をしぼりとってさぁ。

ほら、お嬢さん、酒を持って来な。

隣に座って、あんたも飲めよ。たまには浴びるほど酒を飲んでもバチはあたらないってさぁ!」

こういうのは、どう?

快楽なのか禁欲なのか、それとも、ただの愚痴かしらね。

私に「これからの人生、どちらを選びますか?」だなんて言われても。

そうね、快楽が選択肢なるのは、禁欲の世界に生きる神父様達やシスター達から叱られてしまいそうですわね。



貴女の昼下がりのような気だるさは、とても私の男の本能を刺激します。

欲望が善か悪か?

神父のことを持ち出したということは、貴女は欲望の善悪を私に投げかけたようですね。

いいですか、欲望の善悪なんて、いずれでもないことなど、ほんの少し突き詰めればわかるものですよ。

所詮は、ありきたりな二元論対立の選択に過ぎませんから。

私は禁欲的に生きてきました。

人として美しく生きていたいと願っていましたよ。2年前までは。

しかし、快楽とはどんなものかと。

そんな生活を一度は味わってみたいと。

貴女がマノン・レスコーのように「愛」が欲しいなら私が愛を差し上げましょう。

代わりに私には快楽を下さい。



さて、どう返信をしていいのやら・・・。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ