表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
×4 未知数の少女達  作者: 有栖川優悟
5/7

*弐拾捌

おうぎ

「今日も大変だったね、扇ちゃん!」

「だね。菊里くくりは?」

「私も二人と同じかな。言うまでもなく」

 しきみと菊里との任務の帰り道。五指――黒い手袋で覆いきれなかった場所――が血にまみれている手を、空にかざした。


「只今帰りましたー」

 本部で、換装を解いた。先程まで赤のリボンでツインテールに結わえていた髪は、糸を切られたマリオネットのように、すとんと下に広がっていく。

「お帰り、扇」

「扇ちゃん久し振りだねー」

 平面的に言葉を返すのは長官のすめらぎさん。何の屈託もなく笑うのは元構成員の水谷みずたにさん。

「やっぱり生きてる奴を相手にするって神経使うっしょ?これだから私は人間が嫌いなんだ。死体の方がよっぽど好きだよ」


「…扇?」

「そうそう。この子、私の次の“ベルセルク”」

 水谷さんは私を指して、目の前の見知らぬ人に他己紹介をする。

「新しい“ベルセルク”か。初めまして。ウチはダチュラ・オルコット。こいつと同じく元構成員で、コードネームは“ルシファー”。吸血鬼と無能力者ブランカー混血デミな」

「あ、はい」

「っていうか、どうしたその血」

 言っているのは左膝の切り傷からの血だろう。止まらずに、左脚の皮膚ひふの上を流れていた。

「任務が少し難しくって…そこまでしないと倒せなくって。ランクAの異形でしたから」

「よしよし、ウチが吸ってやる」

 傷口を舐め上げて、血が溢れなくなった頃合いを見計らって絆創膏が貼られる。かなり慣れた手つきだった。

「そんで扇…だっけ」

「はい、岸波きしなみ扇です」

「じゃあ…お前、何の為にここに来た?」


――何の為に。


 返す答えは、おのずと決まっている。

「復讐したいんです。私を見下す異形共に」

「そっか。ウチも、その為にここに来ていた。――ウチは、親に捨てられた」

 親に、捨てられた。

 自分から親を捨てた私とは、違う。

「…そんな親、自分から捨てちゃえばよかったのに」

「確かに。今でも思うよ、初めからそう出来たら――それに気づいてたら、どんなによかったのかなって」

 ダチュラさんは笑った。菊里みたいな八重歯を覗かせて。

「じゃあね。ウチら、ここに入り浸るのはこの辺にしとくわ。…復讐、達成できるといいな」

「私も!じゃあね、任務頑張ってね!」

 二人は背を向けて去っていった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ