*弐拾肆
*岸波 扇
この作品の主人公。平凡な無能力者の少女だったが、異形のクラスメイト達を見返すためにアヴァロンへ入り、“破壊の狂戦士”ベルセルクとして異形を抹殺する行動に出始める。
*笹部 穂香
無能力者とクタニドのクォーターで、嶋村の従姉妹でもある。ちなみに目が金色なのは遺伝である。また、怒ると怖い。
*吉野 陽菜
サバサバした性格のクトゥグアの少女。炎を操ることができる。いちごミルクをこよなく愛する。
*間宮 忍
穂香と扇の間の席の少女。イモータルであるためか、異常なまでの自殺願望を持っている。紅茶に飴玉と練乳を入れて飲むくらいには甘党である。
*時坂 神楽
このクラスには数える程しかいない無能力者。不幸体質で、スクールバッグにいつもお守りをつけている。
*駿河 東香
三年B組の、ハスターの少女。生徒会長を務めている。基本的に何でもできるので、扇に劣等感を持たれている。
*日笠 しきみ
三年B組の、雪女の少女。コードネームは「エンジェル」。
*能前 菊里
三年C組の、妖狐の少女。コードネームは「エクスカリバー」。
*皇 昏羽
アヴァロン本部長(長官)を務める、死神の女性。
「扇ちゃん、『向かいの放火魔さま。』最新刊読んだ?」
「…というかその題名初めて聞いた」
『向かいの放火魔さま。』。今若者の間で絶大な人気を誇るネット小説家、松田かなりあが『小説家になりませう』で連載していたものをそのまま書籍化したものであり、彼女の代表作となっている。
戸が開いて、新しい出席簿を持った学級担任、嶋村が入ってきた。
「はい、着席。転校生来るぞー、うちのクラスには二名な」
「最近新しい人来ること多いですね…」
片方は金棒を背負いながら、片方は特筆できるものは何も持たず、ドアを開けて入室する。
「じゃあ小田切ー」
金棒を背負っている方の少女が喋り始めた。
「私の名前は小田切氷雨です。鬼です。宜しくお願いします」
二本の角、八重歯、透き通るような銀髪。比喩ではなく正真正銘の鬼だ。
鬼。
一般には人に危害を加え、さらに人を食べてしまう存在とも考えられていた。日本の各地にはその昔、鬼が住んでいたという伝説が残る山が多い。また変身能力があり、見目麗しい青年や美女の姿で現れて若者を誘ったり、化かす相手の家族や知人に化けることができる。
「次。八神ー」
もう片方の少女も、自己紹介をし始める。
「八神・ラングレー・綾音、ニャルラトホテプっす。宜しくお願いします!」
ニャルラトホテプ、またの名を這い寄る混沌。
まだこの世界が混沌としていた頃、絶対的な力をもった存在アザトースが、自らの分身として三つのものを生んだが、ニャルラトホテプはそのうちの一人であり、アザトースの使者とされている。旧支配者の一柱にして、旧支配者の最強のものと同等の力を有する土の精だが、中には普通に人間として暮らしている者も少なくない。
彼女もまた銀髪だが、氷雨のそれとは色味が少々違っている。
「二人とも初めまして。嶋村和穂、クトゥルフだ。じゃあ八神は窓際の一番後ろ、小田切はその隣な」
***
「へえ、ニャルラトホテプかー」
「そうっすけど…もしや貴方はクトゥグアっすか?」
「うん、陽菜でいーよ。宜しくー」
吉野陽菜、クトゥグア。ナイアーラトテップの天敵である。
クトゥグアもまた旧支配者に分類される神であり、顕現の際は「生ける炎」の姿をとるものが多いが、彼女はそうではなく、赤髪のポニーテールの少女の姿をとっている。
「これはこれは、憎むべきクトゥグアじゃないっすか。確か、かつて地球上に召喚されたことあったっすよね」
「え、私そんなことあったっけ?それ多分私の先祖だと思うけど」
「ンガイの森を焼き尽くしたりとか…」
「ああそれね、君達の地球上の拠点だったっけ。でもそれ私じゃないから、恨まないでくれると助かるなー」
「ではそうしておくっす。そちらは?」
青髪の少女が答える。
「私?笹部穂香、クタニドだよー。ちなみにここ、中等部の生徒会長さんはハスターなの」
「…ハスターか」
氷雨は特に取り乱した様子も見せず、黙って聞いていた。
「初めまして、私がこのクラスの学級委員、岸波扇。無能力者だけど、宜しく」
「同じく学級委員の千石早苗、セイレーンです。宜しくお願い致しますね」
「岸波と千石か。宜しく」
「私もー!時坂神楽、岸波ちゃんと同じ無能力者!」
「間宮忍、イモータル!宜しくね?」
「はい!皆様ありがとうございます!」
「皆がこれから私と仲良くしてくれたら嬉しい」
夏休みまであと一ヶ月、二人の新たな仲間とともに扇は新たなスタートを切ることになる。